『ゆびさきに魔法』/三浦しをん ◎


庶民的な商店街で、一人でネイルサロンを開いている美佐のもとに、星絵という若い女性がスタッフ志願してくる。
そこから始まる三浦しをんさんのお仕事小説『ゆびさきに魔法』は、清々しく煌びやかで楽しく、でもその裏側でとても努力をしている人々が描かれていて、読みごたえがありました。

私数年前、腰椎ヘルニアになったんですよ。屈みこむと痛くて、足の爪が切れない。家族に頼むのも、面倒。
で、ふと気付いたんですよ。「サロンでペディキュアしてもらえば、足の爪切ってもらえるじゃん!」って。
その頃、息子の高校のママ友さんたちの中にすごく素敵なネイルをしてる方がいて、いいなぁと思ってたんですが、私の仕事は食品を扱う客商売。ネイルは禁止なんですよね。
でも、足ならどうよ?靴下履いて仕事靴履いてるんだから、別にお客さんから見えないし、いいよね!
ということで、数年来ペディキュアでお世話になってるサロンがあります。
そこのスタッフさんやサロンの様子を思い出しながら読んでたら、よりリアルで素敵な読書体験になりました~!

美佐も星絵も、確かな技術力や新しいデザインへの探求心が高く、アーティストであり職人だよなぁと、感心。
ちょっと後ろ向き傾向ではあるものの、コツコツと努力していく美佐に、共感というか憧れを抱きましたね。
どうにも不器用でセンスがない私は、はじけるセンス!怒涛のコミュ力!な星絵にはすごいなとは思うものの「お・・、おぉぅ・・・」とちょっと腰が引けちゃう。いや、いい子なのはよくわかるんですが(笑)。見た目や勢いとは違って、すごく努力家だし素直だし。

そんな二人が、子育て中のママさんのために託児付きサービスを始めたり、サロンの隣の居酒屋で気勢をあげたり、芸能人とかかわりが出来たり、美佐の専門学校時代の友人と直接の交流が復活したり、老人介護施設へのボランティアに行ったりと、様々な経験をしながら、ネイリストとしての技術や心意気もアップデートしながら、人としても成長していく。

ちょっとドキドキするような事件は起こるものの、胃がギュッとなるようなサスペンスはなく、周りの人たちもいい人ばっかりなので、安心して読めました(笑)。
隣の居酒屋「もう一杯」の店主・松永の最初のネイルに対するイメージって、一般的なものですねぇ。それが、だんだん変わっていくのも良かったです。星絵じゃないけど、もっと自由にネイルが受け入れられるようになって欲しいですね。
ネイルじゃお腹は膨れませんが、自分の爪が彩られているってのは、テンション上がることですから。他人から見てどうこうより、自分が嬉しい。だから自分しか見ないのに、ペディキュアやめられないんですよねぇ(笑)。

美佐の専門学校時代の友人・百合奈との交流再開、過去一緒にサロンをやっていた江利に対する美佐のコンプレックスとその昇華も、とても心が温かくなりました。今までのコンプレックスあっての自分の土台、そこからの確実な技術力とその向上、美佐の真摯さが伝わるいいエピソードでした。3人がそれぞれに培ってきたネイルへの気概が、3人でワイワイ盛り上がっていく会話からも伝わってきて、30代お仕事女子の強さとカッコよさが、気持ちよかったです。

国民的俳優の足元が「イチゴ」になってたら、私だったらきゃあきゃあ言って喜びますが、確かにCMでそれが映ったら、広告商品よりそっちに目が行って、頭に残らないでしょうねぇ(笑)。
そうでなくても、男性がネイルというのには、色々世間が批判的に見るようで、介護施設でのボランティアでは男性利用者のボスには反感を買ってしまいましたよね。
でも、内心は「全指ネイルは恥ずかしいけど、一本だけきれいにアートして、他は磨いてもらいたいな」レベルの人も、いたと思うですよね。
リベンジボランティア編があったらいいなぁと思うし、ラストにコロナ禍が来たことの影響や、江利のサロンでいろいろな経験をしてきた星絵の帰還による、サロン〈月と星〉の更なるパワーアップなんかも、読んでみたいです。
しをんさん、続編希望です!お願いします!!

私がしてるのはペディキュア(フット)なので、石などのパーツは付けられないんですが(靴下が破れちゃう)、表紙の色々なパーツをつけてるサンプルを見てたら、なんだか心が豊かになりました。
そして、いつもは2色までのシンプルコースなんですが、万博行った時だけミャクミャクやこみゃくのイラストを描いてもらったんですよね。あの時のワクワク感を思い出しました。また、何かの機会があったら、プラスアルファのデザインをやってもらおうかなぁ~♪、なんて気持ちになりました。

それと、サロンのお姉さんたちにこの本をおススメしてみたくなりました。読みやすいし、親近感もってもらえるんじゃないかなぁ。

(2026.05.14 読了)

この記事へのコメント

  • 水無月・R

    todo23さん、ありがとうございます(^^)。
    美佐のお悩み鬱屈は多少あるものの、テンポよく進む展開、煌びやかネイルアートとそれに癒され元気付けられるお客様たち、星絵の参入から広がっていく美佐の人間関係の温かさなど、読んでいてとても心地が良かったです。
    お仕事小説って、楽しいなぁ!
    2026年05月15日 16:46