12編の物語によって、萬春(よろずはる)というバレエを愛しバレエに愛された一人の人間が、様々な角度から描かれています。
春本人、恋人のフランツ、バレエ仲間の純やハッサン、バレエ団のスカウトや舞台監督など、様々な人々が「バレエの神に魅入られ、バレエを魅了し続けたダンサーであり振付師である春」を深く愛し、尊敬し、ともに高め合っていく。
春の語る章も織り交ぜながら、バレエ仲間だけでなく、師匠であるジャンやバレエ学校スカウトのから見た、春の少年時代・青年期がなんとも新鮮でした。
そして最初から才能に恵まれてたんだな・・・だけどそれに甘えることなく、バレエの技術、演目を作り上げる構成力、インスピレーションを具現化する身体能力、そして仲間たちにそれを伝える表現力、全てを研ぎ澄ませて、存在そのものが「芸術」だったんだなぁと、ふわっとした感想になってしまうのだけど・・・。
いくつもの章の中に、春が還暦を迎えてインタビューを受ける章がありました。
才能に恵まれ、芸術の女神に愛されて、・・・何となく早世してしまうんじゃないかって、ちょっと不安に思っていたので、春が還暦を迎えられたと知って、とても嬉しかったです。
そして、意欲的に「日本のバレエ団に、日本発の、日本のオリジナルストーリーの、日本の音楽を使ったバレエを作ってみたかった」と、これから先に『夢十夜』などを構想しているっていう話を読んで、あぁ、誰かこれを本当に具現化してくれないかなぁ、私が初めて見に行く本物のバレエの公演は、それだったらいいのになぁと思いました。
前作で描かれていたフランツとの関係が、けっこう嫉妬にまみれていたり、自分が女だったらフランツの親族から手切れ金を渡されて一人で子供を産んでただろう、そしてその子は素晴らしくバレエの才能があり頭脳も優秀なので掌返しで跡取り候補になるだろう・・・なんていう妄想話で盛り上がったり、けっこうディープだったのが、意外に感じました。
フランととの関係は、春にとって〈バレエも込みでの愛〉つまりバレエの神様をに相対するための関係なのかと思ってたんですよね。
もちろん、バレエも込みなんだけど、・・・なんと表現したらいいんだろう。
バレエが主なのか、二人の愛情関係が主なのか、いや‥どちらもなくてはならないものだったのかな、という気がしました。
まさに、フランツが言うように〈運命〉だったのでしょうね。バレエという運命で結びついた愛。
ところで、還暦になった春が「パートナーと暮らしている」と言ってましたが。
誰なんでしょうね?フランツではない気がする。とはいえ、バレエ仲間とも違う気がするし。
本作では出てこなかった七瀬?も違うかなぁ・・・。気になりますね。
そうそう。
本書のページ左下、パラパラとめくっていくとバレエダンサーが踊り出します。かわいい~♪
これは、電子書籍では体験できない楽しみだなぁと思います。
恩田さんの紙書籍へのこだわりなのかな、素敵ですね!
(2026.05.17 読了)
この記事へのコメント
苗坊
まさかスピンオフが出ると思わなくて、皆さんのその後が読めて嬉しかったです。
忘れてしまった方もいてもったいないなぁとも思ったのですが^^;春の還暦を迎えた姿まで見れたのは良かったです。
春のパートナーは誰なんですかね。私もフランツではないだろうなと思っています(笑)
水無月・R
色々な方が登場して、私も「えっと誰だっけ?」と自分の『spring』のレビューをチェックしても出てこず、読み進めながら「あ、あの人か!」だったりしました(笑)。
春のパートナーは、誰だったんでしょうねぇ。