『AI2041 人工知能が変える20年後の未来』/カイフー・リー&チェン・チウファン 中原尚哉・訳 ◎


毎度、言い訳から始めることを、お許し頂きたい。水無月・Rは、超絶文系人間である。
「SFのサイエンス(S)はよくわからないし、Fはフィクションじゃなくてファンタジーだったらいいのに」などと言って、科学技術と人間の共存やそこに発生する情緒なんかを求めて、〈物語性〉で知識や理解力をカバーしようと無理をするのですよ(笑)。
なので、このレビューも毎度ながら、アタマの悪い感想が並びます。
そして、サイエンスの深みは追及しません。ひたすら、〈物語〉としてとらえようとしているので、もしかすると物語著者のチェン・チウファン(陳楸帆)さんやテクノロジー解説担当のカイフー・リー(李開復)さんの求める読者像からは、離れてしまってるかもしれないんですが、まあその辺りはご了承いただきたいです。
この作品が発表されたのは2021年。
『AI2041 人工知能が変える20年後の未来』、時はすでに5年を経ていますので、15年後の私たちの未来が描かれていきます。

AIが発展して、様々なことが便利になり、インフラが整備され、個々の必要性や好みに合わせた提供ができるパーソナルAIを持つようになり、ベーシックインカムのようなシステムで「生活のために働く」必要がなくなったりする未来の物語が10編、それぞれにテクノロジー解説を後ろに付けて載せられています。
色々な国、人種、状況、違った世界観ではあるけれど、2041年という設定は同じ。まだ世界は同一化されておらず、それぞれまだAI技術は発展していく余地がある状態のようです。

実を言うと、物語の方はなんとか読めたんですが、テクノロジー解説は「・・・うん、わからんww」となってしまう部分も多々あり、読み飛ばしもしてました。すみません。
描かれる未来が、AIに乗っ取られたり、人間がAIにすべてを任せてただ享楽的に消費するだけのために生きていくような未来が描かれることはなく、そういった世界はディストピアでしかないと私は思ってるので、安心しました。

10編の物語の中で、異色だったのは「人類殺戮計画」
息子と妻の死が人類の「加速主義(人類発展加速のためには多少の犠牲には目をつぶる・・みたいな感じ)」のせいだったとし、様々なテロを繰り広げる科学者の意図を、「人類を滅亡させることではなく、人類にブレーキをかけるためにインターネットを再起動できないようにする」ことだと看破した捜査者たちが、AIの力を借りてすべてのネットワークを遮断したラストに、戦慄しました(そうする以外になかったのはわかります)。
~いずれは復旧する。時間と忍耐と、信念があれば。~
世界は混乱に陥り、復旧にはとてつもない努力が必要となる。人類に課せられたその試練は困難で、それでもきっと人類は試行錯誤を繰り返しながら、より良き世界を迎えられるように、必死に乗り越えていくのだろうなと、感じました。
とはいえ、出来ればそういうことには巻き込まれたくないな・・・なんて思ったりもしましたねぇ。

「幸福島」の、AIによって効率と富がもたらされた世界で、「幸福」をどのように定義し測るのか、という主題は、とても難しいものだと思いますね。短絡的な幸福を得ても、それに慣れてしまえば「快楽の回し車」から逃れられず、どんなにAIが個々人の情報を収集しそれに適した状況を作り上げても、いずれ満足は得られなくなる。
しかも、個々人の事細かな情報を悪用されないためには、どういったデータベースにそれらを預けたらいいのか?信頼のおけるデータベースとは…?と考えると、なんだか頭が混乱してきてしまいました。超絶文系人間だから、というよりはやっぱりアタマの仕組みが(笑)。

ソフトカバー単行本で、厚みが3.5cmを超える本書、図書館では「文学」ではなく「技術・産業」分野に分類されるんですね。
そんな〈専門書〉扱いな本書が、貸出の順番待ち1年以上って、なんかすごいですねぇ。
〈ビジネスパーソンの生き残りに必携の「SF的ビジネス教養書」が誕生!〉という書籍紹介がありましたが、私は物語として読んでしまいました(笑)。

(2026.05.26 読了)

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