前作『ルージュ ~硝子の太陽~』を読んだ時に、〈林統括主任の殉死で姫川に心の傷を負わせるために描かれた物語〉・・・と感じて、このシリーズを読み進めるのに少々抵抗が出来てしまい、間が3年近く空いてしまいました。
実際、本作『ノーマンズランド』は、林の死が姫川に暗い影を落としている状態から始まります。
姫川の捜査する女子大生殺害事件の容疑者が、別の所轄で逮捕されていることがわかり、情報を得るためにその所轄へ乗り込んだ姫川は、経緯に違和感を覚える。
20年前の少女拉致事件から続く、少女の父と少女の恋人の執念の日々が差し挟まれながら、姫川の捜査は展開していく。
誉田哲也さん、このテーマは・・重いです。
基本、〈姫川玲子 シリーズ〉がハッピーエンドにならないのは、わかってはいるんですけどね。
殺害シーンがグロい、ちょいちょい姫川が暗黒面に流れそうになる(絶対に流れないんだけど)、警察組織や政府(国家)の隠蔽体質や欺瞞や偽装、犯行の切ない理由、もっと他に手はなかったのかと胸が痛くなるような展開、なんとも救いようのない事件の果てに、それでも最善を尽くして解決に挑む姫川たち。
読んでいて、本当につらかったです。
好き合っていた女の子がある日突然失踪して、その父親(警察事務官)から「北朝鮮に拉致されたようだ」と聞かされ、大学を中退して自衛隊に入隊し、特殊部隊への編入希望を出し続ける、江川。
別の所轄に逮捕された、自分の捜査している事件の容疑者について調べ、その過程で武見という検事と知り合う姫川。
とある政治家から、他の警察官が請け負った隠蔽工作への協力(後処理)を依頼されるガンテツ(勝俣)。
ガンテツが今のようなあくどい警官になってしまった経緯。姫川の上司となった日下の、姫川への対処。
凄惨な拷問シーン。拷問で得られた情報の、救いようのなさ。
絡まり合い、迎えたラスト。
北朝鮮による拉致被害は、被害者をターゲットとして行われるもの、見てはならないものを見てしまった(あるいは知ってしまった)被害者を突発的に拉致するもの、両方あるんですね。
そして、拉致被害に関してだけではないけれど、国家間の外交や安全保障の問題などがあるため、踏み込んでの解決が難しいこと。
もどかしくて、つらくて、やりきれない。
容疑者を捕らえたとして、事件は解決したと言えるのか。その背後にある別の事態が大きすぎて、手が出せない状態を、打開できるのか。
拉致被害の末に、少女がどうなったのか、そしてそれを聞いた拷問者の絶望。
切ないとか、そんな簡単な言葉で表現してはいけないような、重さ。それを解決するわけではなく、読者に投げかけて終わる物語。
きっとこれからも、姫川がすべてを解決してスッキリ、という物語にはならないんだと思います。
〈死神〉扱いされるほど、姫川の周りには、関係者の死が頻発する。姫川には、常に暗い影が差している。
本人が、堕ちないことを心がけていても、周りは姫川に危うさを感じている。
国家組織の問題にまで話が及んだ以上、ますます姫川の周りは、きな臭く複雑になっていくことでしょう。
それを読み続ける勇気が、私にあるのか。読みたいという気持ちはあるけれど、今まで以上に心して読まねばならないだろうな、と思っています。
作中で、ガンテツが「裏稼業」的にあくどい行いをするようになったきっかけが描かれ、それがなければガンテツはもっと違う警官人生を送ってたんだろうなと思うと、複雑な気持ちになりました。もちろん、もともとのガンテツの人間性と姫川が相容れない面はあったと思うし、現在のガンテツの在り方はどう考えても、許容できるものではないのですが。
姫川を忌み嫌いながら、姫川の危うさを一番理解してるのが、ガンテツなんだなと思っています。絶対に共闘はしないですけどね。
〈姫川玲子シリーズ〉、やっぱり読み続けたいと思います。
ただ、気力体力、そして描かれる社会的な問題に対する知識や自分なりの考え方など、色々揃わないと大変なんで、そう簡単に取り掛かれないんですけどね。
(2026.06.01 読了)
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