『殺戮にいたる病』/我孫子武丸 〇

うん、実は〈叙述トリック〉ってことは、知ってて読んだんですよね。な・の・に!まるっと騙されました・・・最後の最後まで!!いや、最初の方で「んん?なんかこれおかしくないか?」って思ったんですけどね、殺人描写のグロさに目眩まされちゃって、そっちに気が行ってしまって(グロいのはあんまり得意じゃないんで)。我孫子武丸さんの『殺戮にいたる病』、新聞だったか雑誌だったかの書評で〈叙述トリックの至宝〉とかなんとか、紹介されててですね、「じゃあ、騙されるわけにはいかないわな(笑)」ってリスト入りしたんですよ。それがまあ、全くもって、まるっと騙されました。(まあ、水無月・Rの脳内処理能力じゃそうなっても仕方ないのかも) 先ほども書きましたが、なんかおかしいなぁ、違和感あるなぁ・・・とは、思ったんですよ。途中々々にも「なんか表現が古臭いなぁ」と思わなくもなかったのですけどね。だけど、まさか、ねぇ。犯人が女性を見付けてあっさりと犯行に及び、それに関して勝手に自分で美化した思いを縷々、吐露してるのを読んでると、すっかり騙されちゃうというか、うぇぇ~って感じてしまって誤魔化されちゃうんですよねぇ。いや、ホントもう、完敗。 次々に女性を殺してその遺体を損壊した上に、持ち帰って更に凌辱するという、犯人・蒲生稔。息子の挙動がおかしいことから、連続殺人犯は息子なのではないか、と疑う母・蒲生雅子。知人が連続殺人の被害者となり、その妹と共に独自捜査を始めてしまう退職刑事・樋口。この三人の視点で、犯行とその背景が語られていく。 稔…

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『東京自叙伝』/奥泉光 〇

時に多数の鼠や地下生物や鳥などに拡散し、時に一人の人間に凝縮しながら、長きにわたって「東京」という土地に意識があり続ける存在の〈私〉。その私が語りだす、5人の人間に凝縮していた時代の物語、『東京自叙伝』。いやぁ、読むのに時間がかかってしまって、ちょっと疲れました、奥泉光さん。 この作品、感想難しいです…。面白かった、と一言では言えない。幕末あたりから東日本大震災まで、人間の意識に凝縮しながらも、鼠の習性から地震や火災に狂乱する〈私〉が、様々な事件に関わり合い、ひそかに時代を動かすこともあったり…。という物語なんだけど、人間に意識が凝縮している時ですら、話題があちこちに飛び、細かく分かれる段落でその人間の人となりや来歴を語るという落ち着きのない展開が、ちょっと読みづらかったです。確かに少々厚みのある本ではありましたが、読み終えるのに3週間以上かかったのには、結構参りました。 幕末の辻斬り男・柿崎幸雄、日露戦争時代の軍部参謀・榊春彦、戦後混迷期の裏社会の男・曽根大吾、高度成長期に暗躍した友成光宏、バブル崩壊前後の徒花・戸部みどり、そして原発労働者・郷原聖士、この五人それぞれが「東京の地霊」として東京や東京に関する場所で活動し、暗躍し、掻き乱し、東京という土地の栄枯盛衰を担っている・・という話、で合ってるのかな~、違うのかな~(笑)。 途中から、様々な事件に関連する人物が「私」(当の5人以外でも)であると主張し始めたのには、ちょっと食傷してしまいましたが、後半ぐらいからは「ハイハイ、三島由紀夫もア…

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『火の中の竜 ~ネットコンサルト「さらまんどら」の炎上事件簿~』/汀こもるの 〇

車椅子の美青年所長・オメガ率いる、ネットよろず相談所「さらまんどら」。彼らの得意な分野は「炎上案件」。店のサイトが炎上してしまったパソコン教室の生徒を連れて行った「先生」こと「ぼく」も、その仲間に加わることになり、事件にかかわっていくことに・・・。汀こもるのさん、初読み作家さんです。勢いのある展開で、大変読みやすかったです。『火の中の竜 ~ネットコンサルト「さらまんどら」の炎上事件簿~』、今時感満載でした。ネットってなんとなく使ってるけど、便利な分落とし穴もあるんだなぁと、今更ながら感じました。 メディアワークス文庫ですから、まあがっつりラノベ調。イケメン二人の表紙も「不敵な笑みを浮かべるインテリヤクザ風」と「真面目そうな優男」という、まあグイグイ引っ張りますね(笑)。このインテリヤクザ風が所長のオメガ。筋力がだんだん落ちて最終的には心臓などの不随意筋も動かなくなるという難病に侵されている、薄倖の美青年・・・と言いたいところだけど、まあ口を開けば「炎上メシウマ」「私は失うもののない年金生活者だから」とネットトラブルに突入していく、口数多く車椅子で外出もこなすキャラ立ち。そのオメガと同居する小学生男子・リセと女子高生・サクラ(二人とも事情持ちで引きこもり)、本作ではあまり活躍のなかったコミュ障の校閲(成人女性)、マリー(ガタイの良い成人男性なんだけど…)も「さらまんどら」のメンバー。それぞれ、かなりの個性がある人々ですな。そして本作で新規加入?した先生だけど、最初の方でサラッととんでもないヒントを…

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『ディレクターズ・カット』/歌野晶午 ◎

う~わ~。後味悪~い。さすが歌野晶午さんだよなぁ(^^;)。まさに、『ディレクターズ・カット』。肥大化する自己顕示欲(承認欲求)、捩くれ暴走する「脚色された事実」、救いのないラスト。しかも、実際ありそうなディティールの連続で、読んでいてゾワゾワしました。 知り合いの若者たちを使ってやらせ動画を作成していた製作会社のディレクター・長谷見に、若者の一人・虎太郎から「刺された、アンタの仕込みだろう!」と抗議の一報が入る。寝耳に水の長谷見は現場に駆け付け、虎太郎や周辺に取材を敢行し、警察にはまだ届けるなと言い渡す。長谷見は、虎太郎が拾った名刺「美容師・川島輪生」をもとに、視聴率のために警察に先んじて調査を続けた結果大スクープをモノにするが、警察への通報を遅らせたため、無期停職処分を受けてしまう。一度はTV業界への復讐を考えた長谷見だが、何度かの失敗を経て、再度TVへの復帰を目指して大勝負を打とうとするが・・・。 やらせ動画のためだけではなく、自分たちの憂さ晴らしもかねて傍若無人に行動する若者たち、非常に気分が悪いオープニングでした。そして、職場で無視されいじめられている青年・川島(悪意あるあだ名がリンネ)の故意ではなかった犯行と、そこから暴発する鬱屈と重ねられる犯行にも、胃が重くなってきました。 基本的な視点は長谷見のものなので、彼の「視聴率第一主義」にもイライラする。彼の周辺の若者たちも、自分が良ければそれでいいという身勝手さが目立つ。 でも、どれも現代にはありがちというか、全然フィクションじゃ…

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『室町繚乱 ~義満と世阿弥と吉野の姫君~』/阿部暁子 ◎

室町時代の知識があまりないまま読み始めたのですが、阿部暁子さん、大変面白かったです。 世間知らずだった南朝の皇女・透子の成長を描いた『室町繚乱 ~義満と世阿弥と吉野の姫君~』、相争う南北朝及び幕府という複雑な政治事情を背負った若者たちの苦悩と決意を咲き乱れさせる、力強い物語でした。 吉野の山奥の南朝から、北朝に寝返った楠木正儀を連れ戻すため、姿を少年に変え京に潜入した皇女・透子は、人買いに攫われたところを美少女と若武者に救われる。 ところがこの二人、実は時の将軍・義満とその小姓である猿楽師の鬼夜叉(のちの世阿弥)。あっさり正体を知られてしまった透子は、椿丸として義満の小姓を務めることになる。 北朝憎し、幕府憎し、おのが南朝こそ正統であると凝り固まっていた透子だが、義満・鬼夜叉と共に行動するうちに世の中を知り、争い合うことで国と民草が疲弊していく事実を知っていく・・・。 最初のうちは、透子の貴い身分ゆえの思慮の足りなさや世間を知らない言動に、ちょっとイライラしてたのですが、現状を知り、亡き父の思いを知り、世の平和を分かち合おうと思うに至る成長を読むにつれ、清々しい気持ちになって来ました。 鬼夜叉に対する同僚たちの嫌がらせに対してまっすぐに怒りを示したり、鬼夜叉の弟・四郎とのやり取りが微笑ましかったり、育ちの良さからの美しいほどの真っ直ぐさと心優しさも持っているんですね。 そんな透子が、自分を取り戻すという名目で伯父宮・宗良親王が起こした「義満拉致」の現場に乗り込み、宗良親王…

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『抱卵』/堀真潮 ◎

スイートなものからダークなものまで、様々な掌編が詰まった一冊。本作『抱卵』でデビューの堀真潮さんは、表題作「抱卵」で第一回「ショートショート大賞」を受賞。24作品、それぞれに違った味わいがあり、楽しめました! まず、一番最初の作品「井戸の住人」で、ぐっと掴まれました。井戸に引きこもってる(笑)幽霊とその家の夫婦と霊媒師のやり取りが、可笑しすぎ。でもきちんとほっこりする終わり方で、面白かったです。 「チョキ1グランプリ」が一番好きですなぁ。少年少女の初々しさが素敵。チョキ(ピース)の美しさを競うコンテスト、という設定が面白いし、代表の少女を温かく応援する地域の人たちも優しくて。好きな人のチョキが、一番素敵に見えるものなんですよね~♪ 「本の一生」も、本好きにはたまらない展開ながら、最後のひねりにはニヤリとしてしまいましたね~。まさかの〈繁殖〉とは(笑)。中盤で「本」がでろでろになった時は、ビクビクしましたけど。 表題作「抱卵」も切なく、幻想的で美しかったです。戦場で死んだ恋人の胸にあった4つの卵。その卵の味と、恋人の思いと、4つ目の卵を抱いて生き続ける女性。そして、彼女に差し伸べられた手と4つ目の卵の結末。スッと胸が晴れるような気持ちになりました。 「瓶の博物館」も面白かったです。私もこういう博物館に、行ってみたいですねぇ。それぞれの瓶に見合った音が聞こえるなんて、素敵ですもの。とっておきのワインの瓶が、高音のアリアで・・・そして、茫然とワイン臭くなって立ち尽くす、というラストも、私的には…

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『タンゴ・イン・ザ・ダーク』/サクラ・ヒロ △

いやぁ・・・久し振りに読了後、「え~と、だから、何?」って思ってしまいました。サクラ・ヒロさん好きな方、ごめんなさい。私には、このカオスな世界観が理解できませんでした。真の暗闇の地下室で音楽セッションする夫婦を描いた『タンゴ・イン・ザ・ダーク』、何がどうしてこうなって、そしてどういうラストになったのか・・・。 ある日突然、妻が「顔にやけどをした。病院に行くほどではない。でも見られるのが恥ずかしい。」と言って、寝室に引き籠ってしまう。互いに自立している夫婦であるためしばらくの間はそれで何とかなっていたが、妻は寝室から出てくるどころか、キッチンやシャワーまで整っている地下室に移動してしまい、夫の夕食は夫のいない間に用意できてはいるけれど、ずっと夫婦は顔を合わせることがないまま日々が過ぎていく。地下室に籠る妻は暗闇の中でなら会うと言い、地下から出てくる条件として、自分がプログラムした「オルフェウス」というゲームの上位者ランキングに入ったら、という。市役所勤めの夫は「オルフェウス」をプレイし続けるが、全くランキング入りできないどころか、日常生活に支障まで出始める。「オルフェウス」から、地獄の門番を音楽で手懐け妻を連れ帰ろうとするエピソードを思い出した夫は、地下を訪れてフルートを演奏しようと思い立ち、練習に励む。更に日常生活(彼の社会性)は破綻していく。真っ暗な地下室で、夫はフルートで妻はギターでセッションし、演奏を重ね技術向上するにつれ、夫は不可思議な体験をしていく。 冥界脱出譚、妻は双子で名前も同じ…

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『ずぼらな青木さんの冷えとり毎日』/青木美詠子 〇

私、かなりの冷え性でございます。 冬は、靴下なくして眠れない、基本衣類はタートルネック、タイツと靴下とズボンの重ね履きがデフォルト、夏だって、スーパーの食品売り場に行くなら長袖カーディガンが手放せない(棚からの冷気に負ける)。 そんな私が『ずぼらな青木さんの冷えとり毎日』というタイトルを発見したら、読むしかないですよ、ハイ。 ずぼらでもOKなんですね?よろんで~♪って感じでした(笑)。 著者・青木美詠子さんが、「冷え取り」と付き合った10年を書き綴った、実用書。 イラストが沢山、文字数も少なくて、1日で読めちゃいました(笑)。 ゆる~く無理せず、自分にできることを続ける…てのが、極意のようです。 基本は「絹とその他天然素材の靴下を、交互に4枚以上重ね履き」、「足元温めて上半身は薄着」、「半身浴」、「食べ過ぎず、体を温める食材を」って感じでしょうか。 まあ、割と普通というか、最近はよく知られてるようなことが多いですね。 改めて、まとめて読んだって感はあります。 やれそうなことを、ちょっとやってみようかな・・・・と思いました。 つま先立ちとか、食べ過ぎないとか(おいおい)、温める食べ物とか、ヨガもどきとか。 ただねぇ、・・・正直なこと言っちゃっていいですか? この本、私には、難しいことがたくさんあります。 半身浴で1時間お風呂とか無理。夏でも肩までドボンと浸かりたいタイプなんです、私。 チョコやバターを止めるのも、難しいなぁ。 そして、たぶんこの本の一番のメ…

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『絶対正義』/秋吉理香子 ◎

評価は◎ですけどぉ~~~。でも、読後感は、最悪ですよ・・・秋𠮷理香子さん・・・。前評判は思いっきり聞いてたんで、覚悟してたんですけど、設定から展開から、もうイヤミス感全開で。・・・この読後感の酷さは、正直久しぶりです。だけど、グイグイ読まされてしまう。怖ろしい。『絶対正義』を標榜する範子、範子に助けられたことがあるのに、彼女のその「正義」の犠牲にもなった4人の女たち。あ~、怖ろしい話だったわ~。しかし、その〈絶対正義の持つ迫力〉は、凄まじい。ということで、評価は◎なのでした・・・。 範子の「正義」は「法に則るもの」であり、温情や社会通念などは法に則さなければ悪である、という言動の頑なさに辟易して、最初の頃は「うわ~いやだ~私には無理~」しか思えなくて、読み進むのがつらかったです・・・。でも、途中から「彼女たちはどうやって助けられ、そしてどのように彼女の正義に踏みにじられたのか」「彼女たちはどうやって犯行を隠しきったのか」が気になって、グイグイとスピードアップ。 4人はそれぞれ、範子の言動に衝撃を受けつつも「確かに、正義は正しいもんね」と受け入れ、助けられ、感謝し、そして・・・範子の〈絶対正義〉に踏みにじられる。その過程が、気分悪くて仕方ない。彼女たちがした不正或いは不義は、確かに法に触れるものだったかもしれない。だが、正直、もっとひどいことを平気でしている者はいるし、その正義を振り回すことで傷つくものも多くいるのに。正義って、単なる基準なのだなぁ・・・、ということに気付かされました。ああ・・・…

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『お迎えに上がりました。国土交通省国土政策局幽冥推進課(2)』/竹林七草 ◎

前作『お迎えに上がりました。~国土交通省国土政策局幽冥推進課~』があまりにも面白かったので、すぐに図書館の予約を入れたんですが、順番が回ってくるのに2か月ほどかかりました。 いやぁ、本作『お迎えに上がりました。国土交通省国土政策局幽冥推進課(2)』も、大変面白かったですよ~、竹林七草さん!! 元国民の〈地縛霊〉の心残りを晴らして、心安らかに幽冥界へと異動して頂く、という仕事の幽冥推進課。新人職員(有期雇用)の朝霧夕霞は、幽冥推進課初の〈生きてる人間職員〉である。 雇用されて1か月、化け猫(ちょっと違うか)火車先輩をリュックに背負い、相変わらずの奮闘ぶり。 前作は、とにかく右も左もわからない状態から、それでも夕霞の真剣な気持ちと優しい心遣いでもって、少しずつ成長する物語でしたが、本作は「成長したが故の迷いと悩み」と「それでも全力を尽くして前向きに進んでいこうとする」という方向性の物語でしたね。 今までの仕事相手は地縛霊だったのですが、本作では「生霊」「幽冥推進課のお仕事で立ち退きしてもらう相手ではない地縛霊」「神様」と、更にバリエーションを広げて来ました。 サクサク読めるので、あらすじとかは書きません。例によって、気に入ったところなどを。 いやぁ、オッパショ石ですよ(笑)。「オッパショ(おんぶして~)」とシクシク泣き、おんぶしてやるとどんどん重くなるという、子泣き爺みたいな石なんですが、それをどうにかして山の上からふもとの病院まで持って行こうという奮闘する夕霞、自力の徒…

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