『いまはむかし ~竹取異聞~』/阿澄加奈 ○

かぐや姫の5つの宝を天に返すために、旅を続ける月守・アキとキヨ。二人に出会った、家出中の武家貴族の子息・矢吹とその幼馴染で薬師の娘・朝香。彼らは共に旅をし、新たなかぐや姫の物語を繰り広げていく。『竹取物語』は、結構好きなモチーフです。本作『いまはむかし ~竹取異聞~』がデビュー作の阿澄加奈さん。爽やかで、読み心地の良い物語でした! かぐや姫が求婚者に求める「5つの宝」は、実はかぐや姫が天から下界に下りてくるときに月の神様から渡された物である、という設定がこの物語の肝ですね。その宝の力が強すぎて、所有を争う為に戦いが起こり、またかぐや姫を娶れば巨万の富がもたらされるとあって、その存在を巡っても戦乱が巻き起こる。矢吹は武家貴族の息子だけれど、武官になるより物語を語り聞かせる方が得意。矢吹の幼馴染の朝香・まつろわぬ民の族長の息子・翼(たすく)も途中から関わりを持ってきて、若者たちが『かぐや姫』の宿命を変えていく物語はどうなるのだろう、宝を巡って戦う相手の大きさや立ちはだかる困難に、一喜一憂しながら読みました。 ただ・・・、自分たちが集めている宝を持ってる相手に対して、あけっぴろげに「封じて天に返す」とか言っちゃうのは、ちょっと直截すぎないかなぁ。もうちょっと考えようよ、とツッコミを入れてました。真っ直ぐな阿生と輝夜らしいなとは思うんですが(^_^;)。 阿生が決意して、一度輝夜から離れた時、私はきっと阿生は自分の運命を利用して輝夜を助けに行くんだな、と思ってたんですが、違いましたねぇ。さすがに、そ…

続きを読む

『凍りのくじら』/辻村深月 ○

『ハケンアニメ!』がとても面白かったので、今年は辻村深月さんの作品を少しずつ読んでいこう思っています。まずは本作『凍りのくじら』(文庫の帯に読む順番が紹介されててその1冊目でした)。読み始めは主人公・理帆子に共感できなくてちょっと辛かったのですが、読み進むにつれ先が気になり、読み終えたときはちょっと放心してしまいました。 理帆子が何となく流して生きている感じはそんなに拒否感なかったんですけどね、元恋人・若尾とのやり取りが危う過ぎて、イライラを通り越して説教したくなっちゃったんですよねぇ。案の定、ラストにはあんなことになっちゃうし。私、若尾みたいな奴は嫌いです。正直、関わり合いになりたくない…。「若尾がどうなるのか眺めていたい」だなんて、どうして理帆子は危険は自分に及ばないと思い込めるのか。考えが甘すぎる。そこはホント、納得できなかったです。 父は5年前に闘病の末失踪、母も余命わずかで入院中、なんとなく現実とのつながりが薄くなって、高校生活も一歩ひいて教室内を眺めているような理帆子。ある日知り合った上級生・別所は、理帆子に写真のモデルになってほしいと申し出る。別所を介して知り合った小学生・郁也は、父の友人の庶子で、とある時期から口がきけなくなっている。元恋人・若尾から連絡があれば、ズルズルと電話に出たり会ったりしてしまうが、それは未練ではなく若尾の変貌を眺めていたいという冷たい感情から。いくつもの出来事が重なって、郁也を救いに行った理帆子は、何故かそこで別所と会う。そして、別所の真実に気づき、郁…

続きを読む

『主夫になってはじめてわかった主婦のこと』/中村シュフ ○

奥様になる女性から「結婚して家庭に入って下さい」と言われた芸人、中村シュフさんの、主夫エッセイ。男子高から大学の家政科へ進学し、芸人さんになり、家庭に入って主夫になり、主夫芸人として再スタート(兼業シュフとして)を切ったという、なかなかに珍しい経歴の方です。懸賞で入手した本です。主夫である、という事と芸人さんである事その他もろもろ、面白く読ませていただきました。『主夫になってはじめてわかった主婦のこと』というタイトル、世の男性には手に取りづらいかなぁ・・・ぜひ読んでほしいのだけど。 残念ながら、芸人としての中村シュフさんは存じ上げませんでしたが、軽快でわかりやすい文章、男性として主夫の立場に立つ大変さをサラッと流しつつもきっちり表現していて、「確かに、こんな場所で平日昼間にひとりで赤ちゃん連れてる男性見たら、いろいろ想像しちゃうよね~」なんて思いました(笑)。 世の中のイクメンモドキの「土日育児アピール」への批評も、「わかるわかる!」です。ウンチのおむつを替えてくれないなんて、全然イクメンじゃない!食わせてやってる発言&態度許すまじ!気持ちよく過ごしやすいように部屋を掃除し、洗濯をし、買い物してきてご飯作ってるのは、評価されないの?!と、常々私思ってたことを、とげのない文章で表現。男性がこれを言ってくれたら、すごく救われた気になりますよ、ホント。願わくば、世の男性陣に読んでいただきたいものですよ。そして、ちょっとでも理解してくれたらウレシイですな。 家事は流れ、という話。そう、シュフ的活動は…

続きを読む

『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』/ジェーン・スー △ (エッセイ)

タイトル詐欺・・・とまでは言わないけど、ちょっとねぇ・・・。対象年齢&対象立場じゃなかった、ってことかしらん。ジェーン・スーさんという方は、作詞やコラム、ラジオパーソナリティなどマルチな活動をしてらっしゃる方のようです。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』というタイトルは、なかなか刺激的ですけどねぇ。 私ね、いいトシした大人の女が自分を〈女子〉っていうの、嫌いなんですよ。〈女子〉と言っていいのは未成年まで!最悪ギリギリ学生(大学院生含む)まで!成人したら、社会人になったら、自分の言動には責任もって、甘えるのはもうよそうぜ!と思う訳です。そういう論調のエッセイかな~と思ってたので、私的には大変残念な読後感です(^_^;)。いや、親との関係性再構築の話とか、男社会で働くという事についてとか、桃おじさん商売上手の解説とか、興味がもてる章もあったんですけどね。 著者・ジェーン女史が40歳過ぎ、エッセイの対象者は20後半からアラフォーで、独身勤労女性・・・なんだろうなぁ。私と言えば、一応アラフォーは引っかかってるけど、結婚してるし、子供はいるし、ダンナの稼ぎで暮らすパート主婦(実のところは私の収入は住宅ローンに消えてるが)、って立ち位置は多分、ジェーン女史の「仮想敵」とまでは行かなくても、「お気楽でいいわよね」と内心思われそうな感じ。ついつい、そんな穿った見方をしてしまったので、どうにも読み心地が悪い。お金も自由も仕事のやりがいも充実してる独身女性・・・・まあ、羨ましいと思うしね。向こうは向こうで「ダ…

続きを読む

『オーブランの少女』/深緑野分 ◎

美しい庭園・オーブランで惨殺された、管理人の老女。彼女やその妹、殺害者、の正体を記したのではないかと思われる記録。彼女らが少女だったころ、この館で何が起こり、何が真相だったのか。深緑野分さんの鮮烈のデビュー作、『オーブランの少女』。少女にまつわる謎と、その存在の切なさ強さ恐ろしさを色彩豊かに描いた作品でした。 〈少女〉というと、私の読書体験の中から思い描くイメージは、繊細でいてしたたかで、それでいて常に生き辛さと戦う存在、です。本作に出てくる少女たちも、いつも何かと戦っていました。その身を追い詰める何か、閉塞感、生き辛さ・・・。どの少女も、鮮やかに描かれていました。 デビュー作だという「オーブランの少女」の、真相を追って語られていく展開が、凄かったです。全然想像がつかず、何故彼女たちがオーブランに集められたのか分かったところで、切なくなりました。しかも、守るために彼女たちを集めた人の、狂気。少女二人の決死の逃走、そして冒頭の美しい庭園へと物語は廻っていく。悲惨な過去の上に成り立った、美しき庭園。管理者二人を失ったこの庭園は、今後どうなってしまうのだろう。 本作は様々な〈少女〉の切なさを描いた短編集ですが、異色なのは「大雨とトマト」かな。最初は物語の意味がよく判らなくて、注意力散漫なまま読んでいたのですが、店を出た少女を追って行った男の言葉で真相に気づきました。この後、この少女や周りの関係者たちがどうするのか、いったいどんな会話するのかと思ったら、あまり気分は良くなかったですね。 逆にラスト…

続きを読む

『鹿の王(上) ~生き残った者~』/上橋菜穂子 ◎

すごいなぁ。読み進めるうちに、どんどん世界に惹き込まれていく。 上橋菜穂子さんの描く、壮大なファンタジー。 図書館で借りているので、まだ下巻が手元にはなく、先が気になって仕方ありません! 上橋さんが2014年国際アンデルセン賞の作家賞を受賞後の第一作、『鹿の王(上) ~生き残った者~』は、国家間のバランス、民族対立なども含みながら、力強く人間を描いています。 まだ上巻で、先の展開も全然読めないのだけれど、素晴らしいってことだけは、分かります! 上橋さんの作品は、実は『狐笛のかなた』ぐらいしか読んだことがないのですが。 世界設定、人物描写、どれをとっても本当にしっかりしていて、ここに描かれている世界は実際に存在し、それぞれの生活を続けているのだろう、と確信を持ててしまうぐらいです。 岩塩鉱を襲った不気味な黒い犬たち。急発生する未詳の病。死地の岩塩鉱から、とある男と幼子だけがそこから脱出し、辺境の集落に身を寄せる。 病を調べる医師は、高度な知識技術を持つ組織だけを残してほろんだ国の者で、病の発生やその経過に不信を持つその組織の命により、病そのものと合わせて事情を調査することになる。 上巻ではまだ、この2つの物語は別々に進行していますが、全部が絡まり合って「黒狼病」の真実や世界勢力の対立などが詳しく書かれていくのだろうと思うと、下巻が楽しみでなりません。 不可思議な存在、登場人物たちを巡る複雑な関係、物語がどんな出来事を経て、どんなラストを迎えるのか。想像もつきません。 …

続きを読む

『ある小馬裁判の記』/ジェイムズ・オールドリッジ △

森谷明子さんの『花野に眠る』で、佐由留君が読んでいた本。どんな結末になるのか気になって図書館で借りてきたのですが、これ・・・児童書なんですよねぇ?私には結構、難しかったんですが(^_^;)。一頭の小馬(ポニー)の所有を巡っての『ある小馬裁判の記』、町を二分するほどの騒ぎになったその顛末が詳細に語られています。著者はオーストラリアで少年時代を過ごしたイギリス人、ジェイムズ・オールドリッジさん。 冒頭書きましたが、私には難しかったんですよねぇ…。町の状況説明とか、ちょっと長々しくて、読み辛かった。訳が古いからか、文章もやけに固く、普段どれだけ頭使ってないのか水無月・Rよ…って感じですが、理解にも時間がかかり。物語の肝である法の適用の公正さとか、裁判の展開とかは、まあ何とかついていけたのですが。 感情論ではなく理性的に合理的な、最後の裁判のやり方を提案し関係者に受け入れさせた、クェイル弁護士の手腕と誠実さには、とても感心しました。誰もが躍起になって罪の白黒をつけようとする中、少年が小馬を盗んだか否かの裁判ではなく、当の小馬がどちらの小馬であるかの裁判に変わるとなった後の、町の人々のそれぞれが二手に分かれるさまは、奇妙でもあり、納得もできることでもあり、丁寧に描かれていました。ややスコティー側でありながらも、ジョジーにも配慮を怠らなかった、語り手であるキット・クェイルの公正さも父親譲りの誠実さがあったのだなあと感じましたね。 小馬がどちらのものか裁判で決した後、ジョジーがスコティーを訪れて「たまに来…

続きを読む

『ネト充のススメ(2)』/黒曜燐 ◎ (コミックス)

待望の『ネト充のススメ(2)』なのですよ!もう、ときめきまくりで、心臓口から出そうです(笑)。もりもりちゃんと一緒に、キュン死寸前です!黒曜燐さん、ありがとうございます&単行本2巻発売おめでとうございます~! まあ、どんだけ『ネト充』が好きかを語り始めたら、皆様に嫌がられるレベルのねちっこい文章になりそうなので、止めときます(笑)。前巻『ネト充のススメ』のレビューの時にもいろいろ書きましたしねぇ(^_^;)。 で、2巻ですよ。もうたまりませんな。〈comico〉で読んでるから、展開は分かってるし、この2巻以降の話だって知ってるのに、もうきゅんきゅんしまくりで(笑)。林君のときめきは、私のときめき!リリィちゃん可愛い!ネトゲ仲間もみんな、いい奴で、現実パートもいい感じに話が広がり始めて。あああ!もううう!!のたうち回っちゃうじゃないですか! 今回、新キャラとして現実パートに桜井さんと小岩井さんが登場。桜井さんの眼鏡男子っぷりも、素敵ですなぁ!でもやっぱり私は藤本君の方が好みなんだけどね(笑)。桜井さんは金髪碧眼、ちょっとイケメン過ぎて…近寄りがたい(いろんなイミで近寄れるわけないけど)。でも、そんな桜井さんでも色々トホホなところがあるので、憎めなくて可愛いなぁ!って思うんですよね~。小岩井さんは、・・・すんばらしく、いいですよねぇ。本作ではちょろっとだけしかでてきてませんが、〈comico〉でのコメント欄での人気は目覚ましいものがあります。小岩井製品(コーヒーとかジュースとかヨーグルトとか)飲…

続きを読む

『花野に眠る』/森谷明子 ◎

秋葉図書館に舞い込むささやかな謎をそっと解いてゆく、『れんげ野原のまんなかで』の続編、『花野に眠る』。やっぱり、図書館がらみ・本がらみの物語って、いいですねぇ、森谷明子さん!読書好きにはたまらないです、こういう物語。 ただ、今回は図書館がらみというよりも、大地主・秋葉家にかかわる様々なミステリーや思い出などが物語になってた感じ。もちろん、本の知識もあちこちに出てくるし、図書館という色々な人がふらりと立ち寄るような公共の場所ならではの、人間関係の面白さや意外さなども、物語の展開にいい味を加えてはいたのですが。 前作でれんげを植えた秋葉氏、田んぼを復活させるという発言もあったし、「次作は水田のまんなかでかしら(笑)」とか思ってたんですが、それはもうちょっと先の話になりそうですね♪しかしホント、本作でも「気さくでガハハなじい様」ぶりは健在、頼れる地元の名士って感じでいいですね!お年寄りっていう感じがしない(笑)。 内容細かく書いていくと、ホントどの章にもいろいろ言及したくなってしまうので、少しだけ。 本作で一番うれしかったこと。「エリノア・ファージョンの児童文学が取り上げられていたこと」です。本が好きな子供だった私ですが、読んでいた海外児童文学と言えば『赤毛のアン』や『ドリトル先生』などの超メジャーな作品ばかり。小学校高学年になって初めて、「ファージョン作品集」を図書館で見つけて読み始め、瞬く間に夢中になりました。『マーティン・ピピン』シリーズ、『銀のシギ』『としとったばあやのお話かご』『ムギと…

続きを読む

『黒猫の遊歩あるいは美学講義』/森晶麿 ○

美学…美学。美学とは何ぞや(^_^;)。まずそこから蹴躓く私。物語が黒猫の美学論になると、途端に?マークが飛び出し、私の頭の周りをぐるぐる回ってました。す、すみません。美学難しいよ美学。森晶麿さんの『黒猫の遊歩あるいは美学講義』、美学抜きでは語れないのに、美学がわからん私が読みました(笑)。 24歳の若さで教授就任した、通称「黒猫」(本名描写なし)。黒猫の付き人をしている女子大学院生の専攻はエドガー・アラン・ポオ。彼女の研究するポオの各編を下敷きに、各章の物語が進んでいくのですが、ポオの作品は有名どころのあらすじぐらいしか知らなくて・・・。きちんと読んで、かつ美学的なことの素養もあったら、もっと楽しめたのかなぁ…という気もしますな、残念。 とは言え、重要なことではありますが、それを置いといても、面白かったですよ。賢い人の語ることは難しいけど、やっぱり博学な頭脳から繰り出される様々な推測や論理展開は、ナルホドなぁと思いますもん。それに、やっぱり黒猫と付き人の微妙な関係の揺れ動きは、読んでて「うふふふ・・・・」ってなっちゃいましたしね。ええ、私はキャラ読み派ですともさ♪黒猫も、実は実はかわいい奴だし、付き人さんも学究の徒にありがちな初心さが可愛らしい。美学は分からんが、微妙な恋心は美味しいです!微妙な恋心とミステリの組み合わせは王道ですしねぇ♪そんなわけで、美学分からないままに続巻を読んでもいいのか、ちょっと悩んでおりまする(笑)。 あ、そうそう。一番最後の章「月と王様」で明かされる「骨笛」のト…

続きを読む