『ノーマンズランド』/誉田哲也 〇

ノーマンズランド (光文社文庫) [ 誉田哲也 ] - 楽天ブックス 前作『ルージュ ~硝子の太陽~』を読んだ時に、〈林統括主任の殉死で姫川に心の傷を負わせるために描かれた物語〉・・・と感じて、このシリーズを読み進めるのに少々抵抗が出来てしまい、間が3年近く空いてしまいました。実際、本作『ノーマンズランド』は、林の死が姫川に暗い影を落としている状態から始まります。姫川の捜査する女子大生殺害事件の容疑者が、別の所轄で逮捕されていることがわかり、情報を得るためにその所轄へ乗り込んだ姫川は、経緯に違和感を覚える。20年前の少女拉致事件から続く、少女の父と少女の恋人の執念の日々が差し挟まれながら、姫川の捜査は展開していく。誉田哲也さん、このテーマは・・重いです。 基本、〈姫川玲子 シリーズ〉がハッピーエンドにならないのは、わかってはいるんですけどね。殺害シーンがグロい、ちょいちょい姫川が暗黒面に流れそうになる(絶対に流れないんだけど)、警察組織や政府(国家)の隠蔽体質や欺瞞や偽装、犯行の切ない理由、もっと他に手はなかったのかと胸が痛くなるような展開、なんとも救いようのない事件の果てに、それでも最善を尽くして解決に挑む姫川たち。読んでいて、本当につらかったです。 好き合っていた女の子がある日突然失踪して、その父親(警察事務官)から「北朝鮮に拉致されたようだ」と聞かされ、大学を中退して自衛隊に入隊し、特殊部隊への編入希望を出し続ける、江川。別の所轄に逮捕された、自分の捜査している事件の容疑者について調べ…

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『AI2041 人工知能が変える20年後の未来』/カイフー・リー&チェン・チウファン 中原尚哉・訳 ◎

AI 2041 人工知能が変える20年後の未来 [ カイフー・リー(李 開復) ] - 楽天ブックス 毎度、いい訳から始めさせて頂きたい。水無月・Rは、超絶文系人間である。「SFのサイエンスはよくわからないし、Fはフィクションじゃなくてファンタジーだったらいいのに」などと言って、科学技術と人間の共存やそこに発生する情緒なんかを求めて、〈物語性〉で知識や理解力をカバーしようと無理をするのですよ(笑)。なので、このレビューも毎度ながら、アタマの悪い感想が並びます。そして、サイエンスの深みは追及しません。ひたすら、〈物語〉としてとらえようとしているので、もしかすると物語著者のチェン・チウファン(陳楸帆)さんやテクノロジー解説担当のカイフー・リー(李開復)さんの求める読者像からは、離れてしまってるかもしれないんですが、まあその辺りはご了承いただきたいです。この作品が発表されたのは2021年。『AI2041 人工知能が変える20年後の未来』、時はすでに5年を経ていますので、15年後の私たちの未来が描かれていきます。 AIが発展して、様々なことが便利になり、インフラが整備され、個々の必要性や好みに合わせた提供ができるパーソナルAIを持つようになり、ベーシックインカムのようなシステムで「生活のために働く」必要がなくなったりする未来の物語が10編、それぞれにテクノロジー解説を後ろに付けて載せられています。色々な国、人種、状況、違った世界観ではあるけれど、2041年という設定は同じ。まだ世界は同一化されておらず…

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『怖ガラセ屋サン』/澤村伊智 ◎

怖ガラセ屋サン (幻冬舎文庫) [ 澤村伊智 ] - 楽天ブックス『怖ガラセ屋サン』という妙にカタコトめいたカタカナ表記が、絶妙な緊張感を生むタイトル。澤村伊智さん作品は、〈比嘉姉妹 シリーズ〉で「濁点入りひらがなタイトルは怖さが滲み出す」と思ってたんですけど、カタコト風もよろしくないですなぁ・・・。不吉なイメージが漂う‥。 様々な年代に渡って色々な地域で、〈怖がらせ屋さん〉が依頼を受けて対象者を〈怖がらせる〉。なんだか「仕置き人」のようですが、金銭を受け取っての稼業ではないらしい。彼女(怖がらせ屋はいつでも20~30代ぐらいの女性)は、淡々と対象者に関わり、最後に恐怖のどん底に突き落とす。基本的に、それは対象者が悪事に身を染めたからで・・・。 6つの物語は互いに全く関係がなく、時代も地域も違うのに、現れる〈怖がらせ屋さん〉なる女性は、同一人物のイメージ。都市伝説なのか、実在なのか、怪談なのか、実話なのか。 最終章では、〈怖がらせ屋さん〉について調べている男が語り手となり、彼の調べた〈怖がらせ屋さんの元ネタ〉〈取材するライター(失踪)〉〈取材する編集者(失踪)〉などがどんどん描かれていき、そして最後に「何ものをも恐れなかった祖父」と怖がらせ屋さんとの関りに気付かされ、祖父がどうなったかを思い出してしまったところで、物語はブツリと切り落とされる。男は、どうなったのか。この章で描かれているのは、作中怪談なのか。作中実話なのか。なにも明らかにならず、読者の推測にのみ委ねられた結末を、私はどう判断す…

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『Spring another season』/恩田陸 ◎

spring another season (単行本) [ 恩田 陸 ] - 楽天ブックス 恩田陸さんの前作、『Spring』の番外編短編集である本書、『spring another season』。12編の物語によって、萬春(よろずはる)というバレエを愛しバレエに愛された一人の人間が、様々な角度から描かれています。春本人、恋人のフランツ、バレエ仲間の純やハッサン、バレエ団のスカウトや舞台監督など、様々な人々が「バレエの神に魅入られ、バレエを魅了し続けたダンサーであり振付師である春」を深く愛し、尊敬し、ともに高め合っていく。 春の語る章も織り交ぜながら、バレエ仲間だけでなく、師匠であるジャンやバレエ学校スカウトのから見た、春の少年時代・青年期がなんとも新鮮でした。そして最初から才能に恵まれてたんだな・・・だけどそれに甘えることなく、バレエの技術、演目を作り上げる構成力、インスピレーションを具現化する身体能力、そして仲間たちにそれを伝える表現力、全てを研ぎ澄ませて、存在そのものが「芸術」だったんだなぁと、ふわっとした感想になってしまうのだけど・・・。 いくつもの章の中に、春が還暦を迎えてインタビューを受ける章がありました。才能に恵まれ、芸術の女神に愛されて、・・・何となく早世してしまうんじゃないかって、ちょっと不安に思っていたので、春が還暦を迎えられたと知って、とても嬉しかったです。そして、意欲的に「日本のバレエ団に、日本発の、日本のオリジナルストーリーの、日本の音楽を使ったバレエを作ってみた…

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『ゆびさきに魔法』/三浦しをん ◎

ゆびさきに魔法 [ 三浦 しをん ] - 楽天ブックス 庶民的な商店街で、一人でネイルサロンを開いている美佐のもとに、星絵という若い女性がスタッフ志願してくる。そこから始まる三浦しをんさんのお仕事小説『ゆびさきに魔法』は、清々しく煌びやかで楽しく、でもその裏側でとても努力をしている人々が描かれていて、読みごたえがありました。 私数年前、腰椎ヘルニアになったんですよ。屈みこむと痛くて、足の爪が切れない。家族に頼むのも、面倒。で、ふと気付いたんですよ。「サロンでペディキュアしてもらえば、足の爪切ってもらえるじゃん!」って。その頃、息子の高校のママ友さんたちの中にすごく素敵なネイルをしてる方がいて、いいなぁと思ってたんですが、私の仕事は食品を扱う客商売。ネイルは禁止なんですよね。でも、足ならどうよ?靴下履いて仕事靴履いてるんだから、別にお客さんから見えないし、いいよね!ということで、数年来ペディキュアでお世話になってるサロンがあります。そこのスタッフさんやサロンの様子を思い出しながら読んでたら、よりリアルで素敵な読書体験になりました~! 美佐も星絵も、確かな技術力や新しいデザインへの探求心が高く、アーティストであり職人だよなぁと、感心。ちょっと後ろ向き傾向ではあるものの、コツコツと努力していく美佐に、共感というか憧れを抱きましたね。どうにも不器用でセンスがない私は、はじけるセンス!怒涛のコミュ力!な星絵にはすごいなとは思うものの「お・・、おぉぅ・・・」とちょっと腰が引けちゃう。いや、いい子なのはよ…

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『一生頭がよくなり続ける もっとすごい脳の使い方』/加藤俊徳 〇

一生頭がよくなり続ける もっとすごい脳の使い方 [ 加藤俊徳 ] - 楽天ブックス 『一生頭がよくなり続ける もっとすごい脳の使い方』ってタイトルからして、読む理由が出オチなんですが(笑)。ええ、年々落ち続ける記憶力・思考力・その他もろもろ、もともとの能力の低さを何とか底上げできないものかと、手に取った次第であります。著者の加藤俊徳さんは、〈一万人の脳を診断した脳内科医/医学博士〉だそうで、脳の使い方についてはスペシャリストですね。 冒頭から衝撃。なんと、40代後半から50代が〈脳の最盛期〉なんだそうですよ。え?ホントに?私、まさに〈ドンピシャ・今〉なんですけど。今の私の脳のパフォーマンスを考えたら、信じられないんですけど(笑)。ではでは、この〈最盛期〉を利用して、なんとか〈すごい脳の使い方〉を会得せねばなりませんね。なんせ、中年期にしっかり脳を働かせると、70代・80代になっても、脳はずっと右肩上がりに成長し続けるんだそうですから。 ただし、この本は「読むだけで頭がよくなる系」の本ではありません。「読んで→理解して→実践して→定着させる」というステップを踏んでいかないと、結局は「読み流しただけ~」になっちゃう。そこが難しいんですよねぇ。なんせ、脳の基礎体力が落ちまくってるので(笑)。 まず、脳には「思考系」「理解系」「記憶系」「感情系」「伝達系」「運動系」「視覚系」「聴覚系」の8つの専門分野があり、それらは連携して働くということ。脳への刺激でシナプスに電気信号が送られて、電気信号が増える…

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『グレイヘアと生きる』/近藤サト 〇(エッセイ)

グレイヘアと生きる 【電子書籍】[ 近藤 サト ] - 楽天Kobo電子書籍ストア 近藤サトさんがグレイヘアになって話題になった時、「いいな、素敵だな」って思ったんですよね。それまでは「中途半端に白髪交じりになるぐらいなら、いっそ一気に白髪(シルバーヘア)になりたい」と願っていたんですけど。現実問題、それは難しい話なので、「ある程度までは染めて、ある日突然やめる・・・のも難しいよなぁ」と悩むほどではないけれど、気にしてはいました。タイトルもいいですよねぇ、『グレイヘアと生きる』って。どんなふうにサトさんが〈グレイヘアと生きていくこと〉を決めたのか、知りたくて読みました。 実は私、かぶれるのが怖くてパーマもカラーもしたことがないんです。日焼けも怖くて、夏場は帽子や日傘で完全防備。おかげさまで、年齢の割には白髪が少ないので、白髪染めもしたことがありません。ですがやはり、寄る年波には勝てず、50代半ばにしてチラホラと白いものが目立ち始めました。「やっぱり、一気にシルバーヘアにはならないか・・・」「であれば、染めずにこのままグレイヘアに移行したい」という思いが膨らんできました。そして、以前からグレイヘア関連で知っていた近藤サトさんがエッセイを出していることを知って、読んでみようという気になったのでした。 ただし、サトさんはお若いころから白髪染めをし続けて、ある日「災害時持ち出し品に白髪染めを入れようとしてた自分」に愕然として、その後も紆余曲折ありながらも、グレイヘアへと舵を切ったので、最初から染めな…

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『それいけ!平安部』/宮島未奈 ◎

それいけ!平安部 [ 宮島 未奈 ] - 楽天ブックス はぁ~、面白かった!!〈成瀬 シリーズ〉の宮島未奈さんの青春小説なんだから、読む前から面白いのは、わかってましたよ(笑)。でもさ、その予想のはるか上をいく面白さなんですよ!私も、〈高校生に戻って平安部に入りたい!〉な~んて思っちゃいました。〈成瀬 シリーズ〉以上に、青春してましたね~。いやはや、良き哉良き哉。タイトルの『それいけ!平安部』は、平安部の活動の時の掛け声。元気いっぱいの若者たちが円陣組んでこんな掛け声掛けてたら、いやもうオバちゃん微笑ましくて微笑ましくて。飴ちゃん配りたくなってきました(笑)。 高校入学式のその日、クラスで出会った女の子・安以加は、第一声で「平安時代に興味ない?」「あたし、平安時代が大好きなの!」と、〈平安部〉を作りたいんだと宣言する。安以加に興味を持った栞は、クラスの男子に紹介された大日向くん、百人一首部で紹介された2年生生のすみれ、そして安以加の幼馴染の2年生・幸太郎たちとともに、〈平安部〉を創設し、活動を始める。 〈平安部〉とは何ぞや(笑)。安以加いわく〈平安の心を学ぶ〉のだという。「平等院雲中供養菩薩像トランプ」で遊んだり、歴史博物館へ行ったりし、文化祭では〈平安時代のテーマパーク〉をやろうと決め、書道教室をやっている安以加の家へ文化祭に使えそうなものを探しに行ったり。蹴鞠の全国大会を見つけて、元サッカー部の大日向くんを中心に蹴鞠を練習して出場、なんと優勝。文化祭では、〈来場者に平安を感じてもらえるテ…

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『楽園の楽園』/伊坂幸太郎 ◎

楽園の楽園 (単行本) [ 伊坂幸太郎 ] - 楽天ブックス 世界を調和的に運営しているAI『天軸』が、暴走した。開発者である〈先生〉が、天軸をの暴走を止めたのち、消息を絶った。ここから、伊坂幸太郎さん流「西遊記」が、はじまります。 特殊能力を持つ五十九彦(ごじゅうきゅうひこ)・珊瑚嬢(さんごじょう)・蝶八隗(ちょうはっかい)の3人は、天軸のある未開の地に到達し、巨大な巨大な、二本の樹木を発見する。『楽園の楽園』であるその地で、明らかになったこととは・・・。 本として薄く途中にイラストも入り、起こる出来事も割と明快で、3人の会話もポンポンと弾むので、サクサクと読み進めてしまえます。物語の視点は、五十九彦。彼の過去はさらりと語られ、驚異的な身体能力を持つが故にあっさりと困難な状況も乗り越えて、物語の展開は異様に早いです。あまりにテンポがよく、思わず流されてしまいそうになったところで、〈先生〉の残したメッセージが始まり、思いもよらないことを伝え始める。2本の巨大な樹木は、「自然の知能(NI)」ネットワークの中心となり、〈ヒト〉の世界を終わらせるシステムを構築し実行しているのだと。 西遊記に因む名前を持つ3人、〈先生〉を探す旅、目指すは『天軸』。微妙に違うけれど西遊記のパロディだと思い込んで、彼らが世界を救う物語だと思っていました。それこそ『人はどんなものにも「物語(ストーリー)」があると思い込んでしまう』の罠に、かかってたんですね。〈物語読み〉な私は、物語性に期待をしていたわけです。でもよく考え…

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『予言の島』/澤村伊智 〇

予言の島 (角川ホラー文庫) [ 澤村伊智 ] - 楽天ブックス とある霊能者の予言に登場するとされる、島。霊能者の死から20年後に、呪いの存在が現れ、6つの魂が堕ちるという。予言に引き寄せられ島を訪れた人々、島に住む老人たちの不可解な行動、そしてまるで予言が成就するかのように次々と命が奪われていく・・・。澤村伊智さんのホラーは、圧倒的な暴力性と理不尽さがとてつもない勢いで登場人物たちを押し流すものだと思っていましたが、本作『予言の島』は、基本的には『予言なんてインチキだろう』と思っているのに予言に似てくる状況の不審さ、人々の心の動揺と土着民俗的なしんねりとした恐怖が中心。この物語は、ホラーなのか、ミステリなのか、オカルトなのか。 怨霊にたたられて、それに負けて、死んだという霊能者。彼女の予言を読み解き、舞台となるであろう島を訪れる、幾組かのグループ。何かを隠している島の住人。移住してきたという宿の主人は「土着民俗信仰」的なものだというが、怨霊は祀られていない。台風の来た夜に、旅行者の一人が姿を消し、港に死体として浮いてるのを発見される。島の警察官の元を訪れた旅行者は警察官の死体を発見し、少し離れた場所で怪我をして気を失っている仲間を見つけ、宿に連れ帰る。霊能者の孫だと告白した女性は、一人で山に入り、真実を確認。そして、とある「怨霊」が山を下りてくる。逃げ惑う人々。川で転んだ老人2人は、胸をかきむしりながら死亡。島の人々の避難所から少し離れた廃校に逃亡した者を追って、霊能者の孫と旅行者は廃校に…

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