『ヴィヴィアンの読書会』/七尾与史 〇

ヴィヴィアンの読書会【電子書籍】[ 七尾与史 ] - 楽天Kobo電子書籍ストア 私的には、七尾与史さんと言えば〈ドS刑事 シリーズ〉ですが(ほかにも作品は出してらっしゃいますが、デビュー作『死亡フラグが立ちました! ~凶器は・・・バナナの皮?!事件~』しか読めてない)、気楽に読める本を探してた図書館の文庫の棚でこのタイトル『ヴィヴィアンの読書会』が目に入り、裏表紙の紹介文を読んで「これは面白そう!厚みもないし!」と喜んでからの著者名確認、「七尾与史さんなら大丈夫!」と確信をもって借りてきました。で、読んでみて大正解でしたよ。ツッコミ処はまあ色々ありましたけどね、サクサク読めて最後には意外な事実も判明し、明るい感じで終わるのもよかったですね。 ベストセラー作家・ヴィヴィアンすみれの没後1年。ヴィヴィアンの秘書だという多摩川という男に招待され、6人の愛読者がヴィヴィアンの自宅である洋館・鈴蘭荘に集められる。出された紅茶には3時間で死に至るという毒が入っていて、解毒剤が欲しければ「ヴィヴィアンすみれは殺された、その犯人が自首してその手段と動機をこの場で詳細に説明するか、自首がなければこの場にいる読書会の参加者全員で推理して特定せよ」というヴィヴィアンからのビデオメッセージが流される。 人工透析が必要なヴィヴィアンが、自宅トイレに閉じ込められて透析できなかったが故に死亡。閉じ込められたのは、トイレの目の前に置いてあった像・ガネちゃんが倒れて出口をふさいだから。防犯カメラによって密室が証明されている…

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『箱庭の巡礼者たち』/恒川光太郎 〇

箱庭の巡礼者たち [ 恒川 光太郎 ] - 楽天ブックス 別の世界が広がっている、箱庭。それが見える人と、見えない人がいる。そして、その箱庭の世界の先には、また別の世界がいくつも繋がっていて、様々な人々が暮らしていて、いくつもの物語が描かれていく。恒川光太郎さんの描く多層世界を、『箱庭の巡礼者たち』と共に幾世代にも渡って一緒に旅をしていたかのような、そんな感覚になる物語でした。 生きている箱庭を拾った少年、現実の世界に見切りをつけてその箱庭に降り立った少女、箱庭の元の所有者。少女は箱庭世界で革命を起こし英雄となり、その孫は人血を吸わない吸血鬼と次元を渡る旅をする。時を渡る銀時計を手に入れた姉弟は何度も危機を回避し、姉はのちに高名な児童文学家に。弟の孫は、発明家となる。吸血鬼だった前世の記憶を持つ少女は、児童文学家に手紙を送る。大きな戦の直前で、時を止めた人々。発明家の創り出したAIは、世界のどこにもない物語を語り始める。自我を持つ有機ロボット・ナチュラロイドが、人間の国の運営を担っている世界。鉱石化することで、朽ちない体を手に入れた一部の人間が長い長い歴史を知り、世界の終わりと始まりを何度も経験し、自らの生き抜く術を選ぶ物語。 いくつもの物語が、少しずつ関連していたり、入れ子構造になっていたり、時代が前後していたり、8000年の盛衰を繰り返す世界を渡る人々がいたり。壮大で、きめ細やかで、合理的かと思えば、とても情緒的でもあり。とても進化したAIがあっても、人間を超越することはなく(一部のAI…

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『気がつけば地獄』/岡部えつ 〇

気がつけば地獄【電子書籍】[ 岡部えつ ] - 楽天Kobo電子書籍ストア 自分宛ての荷物と他人宛ての荷物が間違って配達され、めぐり合わせ悪く取り返すことが出来なかったら。そこから派生して、秘密が秘密を呼び、その事態を作った者をも巻き込んで、思いもよらない結果になったら。うん、確かに『気がつけば地獄』ですな。最後まで読み終えて、誰にとってどういう地獄だったかっていうのが三者三様にハッキリして、ニヤリ。岡部えつさん、私、結構スッキリしましたわ~。 パート主婦の紗依が、夫に内緒で美顔器を購入、ところが受け取った荷物は同じマンションの別の人の荷物だった。今時はそう簡単に取り違えって起こらないけど、もし私が取り違えに気づいたら、「配達員が取り換えに戻ってくる」ことなんて期待しないで、すぐに宅配便の会社に電話するけどな~。確かに、受け取りのサインをしてしまったこちらも悪いけど、サインと宛先人が違うことに気づかない配達員も問題じゃないのかな?ということで、宅配会社のミスとして追求できるはずですもん。 まあもちろん、すぐに気づいて対処したら、「SNSに愚痴を上げて、それを夫の愛人が検索して妻のアカウントを特定」、なんていう展開にはならないから、この物語が成立しなくなっちゃうんですけどね。 結婚して子供が出来て、仕事をやめて専業主婦になったら(子供が幼稚園に行くようになってからは、パートに出ている)、夫から下に見られてることが顕著になってきて、更には夫は全然変わらないことにモヤモヤする紗依。子育てにイライ…

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『777』/伊坂幸太郎 ◎

777 トリプルセブン [ 伊坂 幸太郎 ] - 楽天ブックス 伊坂幸太郎さんの〈殺し屋 シリーズ〉って、とにかく死体が量産されていくのに、何故か軽やかな読み心地なんですよね~。ちょっと私生活がバタバタしてるんですが、合間を縫って楽しく読みました!!シンプルなタイトル『777』、言わずと知れたスロットマシンの「大当たり」の数字ですが、本作に出てくる秘密を解放するパスワードの数がなんと777個。主要登場人物の通称「天道虫」の名前の「七尾」にもかかってるんでしょう。あと、スロットマシンのおもちゃのエピソードもありましたね。そう簡単に出ない「大当たり」の777、今回の事態では何回も「大当たり」が発生してましたね! とにかく「ついてない」殺し屋、天道虫。高級ホテルの一室にプレゼントを届けに行くという〈簡単な仕事〉のはずが、特殊能力〈運がない〉を発揮しまくって、自身も襲われるし、いくつもの死体が発生する事態の渦中に引っ張り込まれる。一度見たもの覚えたものは一生忘れないという驚異の記憶力を持った女性・紙野、紙野から依頼された〈逃がし屋・ココ〉、ココにボディーガードとして雇われた〈高良(コーラ)〉と〈奏田(ソ-ダ)〉、紙野を追う元雇い主の乾、乾に紙野の追跡を依頼された吹き矢使いの〈六人組〉、乾に処理を依頼された業者の〈マクラ〉と〈モウフ〉、人望高い元政治家で情報局長官の蓬とその秘書・佐藤。高級ホテルの日常はたぶん平穏に営まれ、誰も気づかない裏側で、色々な人物が入り乱れ、死闘が繰り広げられ、死体が量産されてい…

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『ifの世界線 ~改変歴史SFアンソロジー~』/石川宗生他 〇

ifの世界線  改変歴史SFアンソロジー【電子書籍】[ 石川宗生 ] - 楽天Kobo電子書籍ストア 斜線堂有紀さんと宮内悠介さんが参加しているので、読みたくなった本作。『ifの世界線 ~改変歴史SFアンソロジー~』というタイトル通り、それぞれ手法も展開も違う〈歴史改変〉の物語、面白かったです。ただ・・・惜しむらく、〈歴史改変〉の本来の正しい(と私たちが認識している現実)歴史を詳しく知っていたら、もっと楽しめたのかなぁと。 「うたう蜘蛛」/石川宗生舞踏病のような状況に、とある音楽が持ち込まれる。「パニック --一九六五年のSNS」/宮内悠介開高健の炎上騒動当時に、SNSがあったら。「一一六二年のlovin’life」/斜線堂有紀和歌を詠語(英語)に翻訳してから披露する世界観で。「大江戸石廓突破仕留」/小川一水日本から地震がなくなった世界線で、幕府転覆計画を阻止するために奔走する。「二〇〇〇一周目のジャンヌ」/伴名練ジャンヌ・ダルクを再検討するという名目で、2万回の生を繰り返させると。 一番よかったのは、斜線堂さんの「一一六二年の~」ですね。和歌を詠語に訳さなければ、発表できないという世界観、思いつきもしませんでしたが、私がこの時代に生きてたら、式子内親王よりもひどい状況になってたと思います(笑)。和歌も英語も出来ないよ・・・。式子内親王の素晴らしい和歌を、軽やかにかつ情緒深く「詠訳」する侍女・帥(そち)。二人で作り上げる美しい歌は、信頼関係と密かで繊細な愛情を育み、帥を失って詠んだ歌の和訳「…

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『すみせごの贄』/澤村伊智 〇

すみせごの贄(7) (角川ホラー文庫) [ 澤村伊智 ] - 楽天ブックス 6つの不可解な出来事を解き明かす、〈比嘉姉妹 シリーズ〉の短編集。このシリーズというか、澤村伊智さんの描く怪異って〈理不尽が過ぎる〉し〈圧倒的に暴力的〉なんですよねぇ。そして、今回も悪意が呼び寄せた怪異が増幅して、理不尽で暴力的な怪異が遠慮会釈なく猛威を振るっています。.うん、夏はやっぱりホラーよねぇ(笑)。表題作、『すみせごの贄』の贄になったのは、どっちだったのでしょうね・・・両方なんだろうな・・・救いがないですなぁ。 「たなわれしょうき」野崎の地方取材についてきた少年が、トラブルに巻き込まれる。「戸栗魅姫の仕事」無限回郎になってしまった旅館を彷徨う、霊能者と少女。そこにライターが加わり。「火曜夕方の客」一人で来て、2人分のカレーを持ち帰る女、後をつけると墓地あたりで姿を消す。「くろがねのわざ」褒めると体調が悪くなる映画があるが、その謎は。「とこよだけ」幸せな幻影に囚われる島。そこで野崎が体験したことは。「すみせごの贄」料理教室の主宰が姿を消し、代理授業をした料理研究家が・・・。 実は本作、読んでいて、個人的なホラー生じましたよ(笑)。「戸栗魅姫の仕事」、読んだことがある気がするんですよ。ところが、ひたすら無限回郎を彷徨う霊能者と少女。そこにライターが加わり・・・までは、読んだことがある気がするけど、結末がどうなったか全然記憶にない。まぁ、水無月・Rの記憶力はザルなので「なんだよ、読んだ内容覚えてないのか、全く頼り…

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『恋に至る病』/斜線堂有紀 ◎

恋に至る病(1) (メディアワークス文庫) [ 斜線堂 有紀 ] - 楽天ブックス いくつかの簡単な指示に従わせ、睡眠時間を削らせて判断能力を奪い、最終的に自殺させる(新しい完璧な世界へ行けると示唆)「ブルーモルフォ」を管理運営する景と、それを見守る幼馴染で恋人の宮嶺。その『恋に至る病』は、誰に発症したものだったのだろうか。『本の背骨が最後に残る』で、陰惨な中に芯のある美しさを宿した登場人物たちの〈物語〉で私を魅了した斜線堂有紀さんの、ファンタジーではなくリアルな現代が舞台の物語、非常にインパクトがありました。 美しく賢い少女が他人を操る術に秀でていたら、そして「流されやすい人間はいずれ悪を成すから、淘汰するべき」という思想を持っていたら。そして唯一人、彼女の味方でありヒーローであり続けることを願う者がいたら。 小学生の時から、クラスメートを操ってバランスの取れた平穏な状況を作り出していた寄河景。小学生がこれを出来る、という時点でサイコパスだと思いましたね。そんな景を怪我から救出したことでクラスの男子に恨まれ、酷いいじめの対象になってしまった宮嶺。そんな宮嶺を救うために、クラスの女子を操って加害の中心人物を処分した景。「指示に従って行動し自殺すれば、新しい完璧な世界へ行ける」という「自殺ゲーム」を管理運営し、それを宮嶺に「見守っていて」と依頼する景。そして、何があっても彼女の味方でありヒーローでい続けようと、すべてを許容してきた宮嶺が最期に景を害し、自らがすべての罪を負って警察に捕まる。 …

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『謎の香りはパン屋から』/土屋うさぎ 〇

謎の香りはパン屋から [ 土屋うさぎ ] - 楽天ブックス 『謎の香りはパン屋から』というタイトルからして、グッとくる。しかも、第23回「このミステリーがすごい!」の大賞受賞作だという。著者名も土屋うさぎさん、と非常にかわいらしい。ふんわか、ほわほわ、楽しくて美味しい日常ミステリーかな?と読み始めました。 「このミス」って、もっとバチバチのミステリー作品が受賞するものだと思ってたので、結構意外でしたね~。日常ミステリーだと言えば、まあそうなんだけど、ミステリー色は薄め。大阪の豊中市にある、〈ノスティモ〉というパン屋さんでバイトしている小春という女子大学生が、パンに絡んだちょっとした謎を解いていく5編。軽く読めて、「誰も死なない系」なので安心できるし、いろんなパンの小ネタもたくさん出てきて、楽しかったです。 ただ、ミステリーに関しては、ちょっと物足りなかったかな~。読者に開示される情報を組み合わせれば謎が解ける、のは事実なんだけど、今一つインパクトが弱いかな。途中で「あ~この謎は、こういう真相だよね~」と予測がついてしまうものも、ありましたし。 それと、ホントこれは私の個人的な好みの問題なんですけど、出てくるパンは美味しそうなんだけど、私の好みとはちょっとズレるのよねぇ(笑)。シナモンロールとかチョココロネみたいな甘いパンは好きじゃないし、カレーパンは胃もたれしちゃうお年頃なんですよ(笑)。私が好きなのは、ライ麦100%とか、ナッツやドライフルーツがぎっしり入ってるような、どっしりしたパンな…

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『しろがねの葉』/千早茜 〇

しろがねの葉 [ 千早 茜 ] - 楽天ブックス 千早茜さんの直木賞受賞作、『しろがねの葉』。石見銀山で生き抜いたウメの、長い長い生涯を描いた物語。銀山の放つ魔力に翻弄されながら生き抜く人々、繋がりゆく命の力強さが印象的でした。 貧しい農村から逃げ出した家族とはぐれ、石見銀山の片隅で山師の喜兵衛に拾われたウメは、生来の気丈さと夜目が利くことを活かし、自ら望んで間歩(銀鉱)に入って働き始める。しかし月のものが始まり、それを「穢れ」と嫌う銀堀達に行動に入ることを拒否される。それでも、喜兵衛と小屋で暮らしつづけていたが、とある出来事に襲われ、喜兵衛が佐渡金山に渡り、幼馴染の隼人に娶られ、喜兵衛の死を知らされ・・・様々な出来事を経て、それでも銀山での暮らしをつないでゆく。 銀山で働く男たちは、いずれ病で倒れゆく。それでも、銀山での働き手をつないでいくために、残された妻は別の男の妻となり、子を産み育てていく。男たちの生き様、女たちの生き様、それぞれの強い心意気あっての銀山の暮らし。その中で、銀堀になれなかったウメが、どのようにして生きていくのか。物語始まりの方はそれがかなり気になっていたのですが、銀山風習の改革を進めるのではなく、他の女たちと同様に隼人の妻となり子を産み育て、銀堀達の町での暮らしになじんでいくウメに、「ちょっと残念だな」と思う気持ちと「このしぶとさこそが、当時の女性として最も強い生き方かも」とと思う気持ち、両方に揺れました。 自分を育ててくれた喜兵衛への思慕、幼いころから競い合ってき…

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『ケチる貴方』/石田夏穂 ◎

ケチる貴方 [ 石田 夏穂 ] - 楽天ブックス 『我が友、スミス』(未読)で芥川賞の候補となったことのある、石田夏穂さん。自他ともに認める(息子が小さい頃、「おかーさん冷たいからお手てつながない!」と拒否られたことがある)冷え性なワタクシ、本書『ケチる貴方』は「冷え性」を扱った物語、と書評で知った途端に、〈読みたい本リスト〉入りしましたよ。石田さんて、『我が友~』はボディビルにのめり込む女性、本書表題作は冷え性と脂肪吸引、身体に関する物語が得意な作家さんなのかしら。ままならぬ身体との真剣なやり取りが、何故こんなにズレていくのか。面白かったです! 「ケチる貴方」、「その周囲、五十八センチ」、どちらもままならぬ自分の体質との戦いを真摯に描いているのに、その真摯に向き合う様子は、一般からズレている気がする。まあ、一般的であるかどうかは、問題じゃないのだけど。 「ケチる~」の佐藤は冷え性なのを周囲にカムアウトすればいいのに・・・と思うけど、これまでも体格的に「冷え性である」ことを揶揄われたりバカにされたり信じてもらえなかったりしたんでしょうねぇ・・・。ふとしたきっかけで、「ケチをやめて消費や自分の仕事のコツなどを提供する」ことで自分の中から熱が産生されることに気づいた佐藤が、今度はどんどん差し出すことで、脈拍すら無駄遣いして頻脈で倒れるという、結果になる。しかし、ケチるのをやめたら冷え性が治るって・・・作中では理路整然と佐藤が納得してたけど、ファンタジーだよねぇ(笑)。あれ?でも、私もケチですわ・…

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