『終活中毒』/秋吉理香子 ◎

終活中毒 (実業之日本社文庫) [ 秋吉 理香子 ] - 楽天ブックス 前作『婚活中毒』を読んだときに、後味が悪い・・・毒されてしまう・・・と思ったんですが、本作『終活中毒』も、なかなか毒されますよ、秋吉理香子さん!!なんせ、テーマが〈終活〉でしょう?50代半ばの私にとっては、婚活よりずっと身近な「活動」なわけですよ。4つの終活が描かれ、どれもなかなかに毒々しいです。 「SDGsな終活」余命宣告された女性と結婚し、彼女の死を待つ男。「最後の終活」久しぶりに帰ってきた息子と、家の整理をしていると。「小説家の終活」わだかまりのあった女流小説家の形見分けで受け取ったワープロから出てきたものは。「お笑いの死神」癌を患うお笑い芸人の舞台の客席に、笑わない黒づくめの男が現れる。 「SDGsな終活」は、男の目論見がうまくいくわけないだろうな、と思ってたら、とんでもない方向から毒がふりまかれ、しかも跡形もなく消される結果になるとは、本当にびっくりしました。悪いことってできないのねぇ・・・っていうか、なかなかに「妻」の方も大胆だなと。そして、お金があるってすごいことなんだなとも思いました(笑)。ざまぁ感が半端なく、ある意味、爽快かも? このレビューの冒頭で「毒される」と書きましたが、実は「SDGs~」以外は、イヤミス感は少なめなんですよ。だけど、〈毒〉なのは事実です。「最後の終活」では、まだら認知症の老人に取り入る詐欺師の存在というどんでん返しの後に、心温まるラストが来て、ホッとしました。でも、なんだか「自…

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『めちゃくちゃわかるよ!印象派』/山田五郎 ◎

めちゃくちゃわかるよ!印象派 山田五郎 オトナの教養講座【電子書籍】[ 山田五郎 ] - 楽天Kobo電子書籍ストア めちゃくちゃわかった!(笑)山田五郎さん、You Tube「山田五郎 オトナの教養講座」ではいつも、絵画解説を楽しませて頂いてます!!たくさんある動画の中から、印象派に関わる人たちの回を文字起こししたものなので、一度は視聴してるのですが、ゆっくり自分のペースで読めるのがよかったです。『めちゃくちゃわかるよ!印象派』のタイトル通り、めちゃくちゃ、よくわかりました!! 18人も紹介されてる中で、絵画として好きなのはターナーとブーダンとシスレー。水や空をバリエーション豊かに描いていて、とても素敵ですよね。風景画の中でも、水や空の輝きや感触が細やかに描かれているのが、清々しく広がる世界を感じさせてくれます。 人物的に興味深いなと思ったのが、クールベとカサット。クールベはその反骨心と革命への衝動が劇的だなぁと。あと「絶望」というタイトルの自画像のインパクトの強さ(笑)。カサットは、ヨーロッパでは今一つだった印象派をアメリカに紹介し大ブレイクさせた立役者であり、子どもを可愛く描くその表現力が、いいなぁと。すねちゃってるモデルの女の子の様子が、ホントに良くわかる。子どもやその母親への暖かい視線が、素晴らしい絵画を仕上げたんだなぁと、ほのぼのとした気持ちになりますね。 他人たちも、「印象派」というムーブメントを盛り上げ一世を風靡させ終了までを見送った、素晴らしい画家たちでした。「自然を見た…

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『百鬼夜行 陰』/京極夏彦 〇

文庫版 百鬼夜行 陰 (講談社文庫) [ 京極 夏彦 ] - 楽天ブックス 京極夏彦さんの〈百鬼夜行 シリーズ〉の本編のサイドストーリー短編集、『百鬼夜行 陰』。シリーズ本編の、事件発生のきっかけだったり、背後で密かに起こっていたりする《狂気》が生まれる状況が描かれています。どの《狂気》も、静かに発生進行し、当人にとってはとてつもなく苦しい状況なのに周りから気付かれることなく極まっていく様子が、恐ろしかったですねぇ・・・。 「小袖の手(こそでのて)」『魍魎の匣』と『絡新婦の理』のサイドストーリー。小学校教諭、杉浦の狂気を描く。「文車妖妃(ふぐるまようひ)」『姑獲鳥の夏』のサイドストーリー。久遠寺涼子の幼いころからの狂気。「目目連(もくもくれん)」『絡新婦の理』のサイドストーリー。平野が視線恐怖症になった、本当の理由。「鬼一口(おにひとくち)」『魍魎の匣』と『ル・ガルー』のサイドストーリー。久保俊公に焚き付けられた狂気に喰われる鈴木。「煙々羅(えんえんら)」『鉄鼠の檻』のサイドストーリー。明慧寺の消火活動に参加していた消防士の「煙」への執着。「倩兮女(けらけらおんな)」『絡新婦の理』のサイドストーリー。女学校教師・山本の狂気。「火間虫入道(ひまむしにゅうどう)」『塗仏の宴 ~宴の支度~』と『塗仏の宴 ~宴の始末~』のサイドストーリー。刑事・岩川が悪魔のような少年にそそのかされ、道を外していく。「襟立衣(えりたてごろも)」『鉄鼠の檻』のサイドストーリー。新興宗派の教祖の孫が、教団の盛衰を思う。「毛…

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『たぶん私たち一生最強』/小林早代子 ◎

たぶん私たち一生最強 [ 小林 早代子 ] - 楽天ブックス なんか・・・すごく羨ましい。《一生最強》ってすごいパワーワードだし、しかも《私たち》ですもんね。価値観というか、ノリやツボが同じだけど、同じ過ぎておかしなことにもならない、絶妙なバランスがあるからこそ成り立つ、女4人のルームシェア。しかも、20代後半から20年の長きにわたり、生活が続いているのだから、これは本物なのですよ(もちろん、物語ではあるのだけど)。あの年代の未婚女子に押し付けられる価値観を躱したり戦ったりしながら、4人でタッグを組んで『たぶん私たち一生最強』を歌い上げる物語、とてもよかったです!著者小林早代子さんは、「女による女のためのR-18文学賞」でデビューした作家さん。あの文学賞出身の作家さん、けっこう私の好みに合う気がしますね。とにかく、夢も現実も困難もなぎ倒す勢いで踊り続ける4人の日々、楽しませていただきましたよ! 女4人のルームシェアって聞くとすっごく楽しそうだけど、「期間限定」とか「揉め事起きて空中分解」とか、マイナス要素もちらほら想像しちゃったりして、夢だけじゃ生きていけないから、現実は厳しそうだな~なんて思ったりもするわけですよ。 とりあえあず、冒頭で「朝」という名前の赤ちゃんが生まれて「母親は4人」となってたし、すごく希望に満ちた雰囲気だったので、ハッピーエンドになることは想像できてたんですが。朝が生まれたことがハッピーエンドじゃなく、それも通過点の一つであり、さらにもっと発展した4人の様子が描かれた最…

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『胸はしる 更級日記』/小迎裕美子・菅原孝標女 監修:赤間恵都子 ◎

胸はしる 更級日記 [ 小迎 裕美子 ] - 楽天ブックス 『本日もいとおかし! 枕草子』、『人生あはれなり・・・ 紫式部日記』に続く、小迎裕美子さんの〈平安女流作家 紹介エッセイ漫画〉第3弾!本作『胸はしる 更級日記』で紹介されたのは、〈ムスメ〉こと菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)。表紙のムスメが眼鏡をかけてる時点で、「あの時代にそんなものあるわけないじゃん!」というツッコミはナシの方向でお願いします(笑)。物語大好き、ひたすらオタク気質を磨いてたムスメのビジュアルイメージは、これで正解だと思うんですよ! パリピなナゴンさん、ぐるぐるお悩みシキブさんに続いて、オタクの鑑なムスメちゃんが登場ですよ(笑)。父親の任地である東国の奥地で、「どうしてもどうしても、物語が読みたい!」と等身大の薬師如来を作って祀っちゃうとか。京に戻ってきて、伯母から『源氏物語』全54巻(54帖)+様々な物語をもらって「お后様になるより、物語読める方が最高!」なんて舞い上がったり。『源氏物語』を読み込み過ぎて、暗誦出来るようになっちゃったり。32歳にしてやっと宮仕えデビューし、物語のような女房生活を妄想するも、「現実は思ってたんとちゃう」となったり。33歳で結婚するものの、夫はもっさりとした文化的センスのない男だったため、余りに日記には登場せず。 ・・・ムスメ、オタク全開だなぁ(笑)。興味のあることはとことん突き詰め、興味がないことは記録に残さない。千年ののちまで日記が残るほどの文章センスがあるムスメ、現代だっ…

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『ヴィヴィアンの読書会』/七尾与史 〇

ヴィヴィアンの読書会【電子書籍】[ 七尾与史 ] - 楽天Kobo電子書籍ストア 私的には、七尾与史さんと言えば〈ドS刑事 シリーズ〉ですが(ほかにも作品は出してらっしゃいますが、デビュー作『死亡フラグが立ちました! ~凶器は・・・バナナの皮?!事件~』しか読めてない)、気楽に読める本を探してた図書館の文庫の棚でこのタイトル『ヴィヴィアンの読書会』が目に入り、裏表紙の紹介文を読んで「これは面白そう!厚みもないし!」と喜んでからの著者名確認、「七尾与史さんなら大丈夫!」と確信をもって借りてきました。で、読んでみて大正解でしたよ。ツッコミ処はまあ色々ありましたけどね、サクサク読めて最後には意外な事実も判明し、明るい感じで終わるのもよかったですね。 ベストセラー作家・ヴィヴィアンすみれの没後1年。ヴィヴィアンの秘書だという多摩川という男に招待され、6人の愛読者がヴィヴィアンの自宅である洋館・鈴蘭荘に集められる。出された紅茶には3時間で死に至るという毒が入っていて、解毒剤が欲しければ「ヴィヴィアンすみれは殺された、その犯人が自首してその手段と動機をこの場で詳細に説明するか、自首がなければこの場にいる読書会の参加者全員で推理して特定せよ」というヴィヴィアンからのビデオメッセージが流される。 人工透析が必要なヴィヴィアンが、自宅トイレに閉じ込められて透析できなかったが故に死亡。閉じ込められたのは、トイレの目の前に置いてあった像・ガネちゃんが倒れて出口をふさいだから。防犯カメラによって密室が証明されている…

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『箱庭の巡礼者たち』/恒川光太郎 〇

箱庭の巡礼者たち [ 恒川 光太郎 ] - 楽天ブックス 別の世界が広がっている、箱庭。それが見える人と、見えない人がいる。そして、その箱庭の世界の先には、また別の世界がいくつも繋がっていて、様々な人々が暮らしていて、いくつもの物語が描かれていく。恒川光太郎さんの描く多層世界を、『箱庭の巡礼者たち』と共に幾世代にも渡って一緒に旅をしていたかのような、そんな感覚になる物語でした。 生きている箱庭を拾った少年、現実の世界に見切りをつけてその箱庭に降り立った少女、箱庭の元の所有者。少女は箱庭世界で革命を起こし英雄となり、その孫は人血を吸わない吸血鬼と次元を渡る旅をする。時を渡る銀時計を手に入れた姉弟は何度も危機を回避し、姉はのちに高名な児童文学家に。弟の孫は、発明家となる。吸血鬼だった前世の記憶を持つ少女は、児童文学家に手紙を送る。大きな戦の直前で、時を止めた人々。発明家の創り出したAIは、世界のどこにもない物語を語り始める。自我を持つ有機ロボット・ナチュラロイドが、人間の国の運営を担っている世界。鉱石化することで、朽ちない体を手に入れた一部の人間が長い長い歴史を知り、世界の終わりと始まりを何度も経験し、自らの生き抜く術を選ぶ物語。 いくつもの物語が、少しずつ関連していたり、入れ子構造になっていたり、時代が前後していたり、8000年の盛衰を繰り返す世界を渡る人々がいたり。壮大で、きめ細やかで、合理的かと思えば、とても情緒的でもあり。とても進化したAIがあっても、人間を超越することはなく(一部のAI…

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『気がつけば地獄』/岡部えつ 〇

気がつけば地獄【電子書籍】[ 岡部えつ ] - 楽天Kobo電子書籍ストア 自分宛ての荷物と他人宛ての荷物が間違って配達され、めぐり合わせ悪く取り返すことが出来なかったら。そこから派生して、秘密が秘密を呼び、その事態を作った者をも巻き込んで、思いもよらない結果になったら。うん、確かに『気がつけば地獄』ですな。最後まで読み終えて、誰にとってどういう地獄だったかっていうのが三者三様にハッキリして、ニヤリ。岡部えつさん、私、結構スッキリしましたわ~。 パート主婦の紗依が、夫に内緒で美顔器を購入、ところが受け取った荷物は同じマンションの別の人の荷物だった。今時はそう簡単に取り違えって起こらないけど、もし私が取り違えに気づいたら、「配達員が取り換えに戻ってくる」ことなんて期待しないで、すぐに宅配便の会社に電話するけどな~。確かに、受け取りのサインをしてしまったこちらも悪いけど、サインと宛先人が違うことに気づかない配達員も問題じゃないのかな?ということで、宅配会社のミスとして追求できるはずですもん。 まあもちろん、すぐに気づいて対処したら、「SNSに愚痴を上げて、それを夫の愛人が検索して妻のアカウントを特定」、なんていう展開にはならないから、この物語が成立しなくなっちゃうんですけどね。 結婚して子供が出来て、仕事をやめて専業主婦になったら(子供が幼稚園に行くようになってからは、パートに出ている)、夫から下に見られてることが顕著になってきて、更には夫は全然変わらないことにモヤモヤする紗依。子育てにイライ…

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『777』/伊坂幸太郎 ◎

777 トリプルセブン [ 伊坂 幸太郎 ] - 楽天ブックス 伊坂幸太郎さんの〈殺し屋 シリーズ〉って、とにかく死体が量産されていくのに、何故か軽やかな読み心地なんですよね~。ちょっと私生活がバタバタしてるんですが、合間を縫って楽しく読みました!!シンプルなタイトル『777』、言わずと知れたスロットマシンの「大当たり」の数字ですが、本作に出てくる秘密を解放するパスワードの数がなんと777個。主要登場人物の通称「天道虫」の名前の「七尾」にもかかってるんでしょう。あと、スロットマシンのおもちゃのエピソードもありましたね。そう簡単に出ない「大当たり」の777、今回の事態では何回も「大当たり」が発生してましたね! とにかく「ついてない」殺し屋、天道虫。高級ホテルの一室にプレゼントを届けに行くという〈簡単な仕事〉のはずが、特殊能力〈運がない〉を発揮しまくって、自身も襲われるし、いくつもの死体が発生する事態の渦中に引っ張り込まれる。一度見たもの覚えたものは一生忘れないという驚異の記憶力を持った女性・紙野、紙野から依頼された〈逃がし屋・ココ〉、ココにボディーガードとして雇われた〈高良(コーラ)〉と〈奏田(ソ-ダ)〉、紙野を追う元雇い主の乾、乾に紙野の追跡を依頼された吹き矢使いの〈六人組〉、乾に処理を依頼された業者の〈マクラ〉と〈モウフ〉、人望高い元政治家で情報局長官の蓬とその秘書・佐藤。高級ホテルの日常はたぶん平穏に営まれ、誰も気づかない裏側で、色々な人物が入り乱れ、死闘が繰り広げられ、死体が量産されてい…

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『ifの世界線 ~改変歴史SFアンソロジー~』/石川宗生他 〇

ifの世界線  改変歴史SFアンソロジー【電子書籍】[ 石川宗生 ] - 楽天Kobo電子書籍ストア 斜線堂有紀さんと宮内悠介さんが参加しているので、読みたくなった本作。『ifの世界線 ~改変歴史SFアンソロジー~』というタイトル通り、それぞれ手法も展開も違う〈歴史改変〉の物語、面白かったです。ただ・・・惜しむらく、〈歴史改変〉の本来の正しい(と私たちが認識している現実)歴史を詳しく知っていたら、もっと楽しめたのかなぁと。 「うたう蜘蛛」/石川宗生舞踏病のような状況に、とある音楽が持ち込まれる。「パニック --一九六五年のSNS」/宮内悠介開高健の炎上騒動当時に、SNSがあったら。「一一六二年のlovin’life」/斜線堂有紀和歌を詠語(英語)に翻訳してから披露する世界観で。「大江戸石廓突破仕留」/小川一水日本から地震がなくなった世界線で、幕府転覆計画を阻止するために奔走する。「二〇〇〇一周目のジャンヌ」/伴名練ジャンヌ・ダルクを再検討するという名目で、2万回の生を繰り返させると。 一番よかったのは、斜線堂さんの「一一六二年の~」ですね。和歌を詠語に訳さなければ、発表できないという世界観、思いつきもしませんでしたが、私がこの時代に生きてたら、式子内親王よりもひどい状況になってたと思います(笑)。和歌も英語も出来ないよ・・・。式子内親王の素晴らしい和歌を、軽やかにかつ情緒深く「詠訳」する侍女・帥(そち)。二人で作り上げる美しい歌は、信頼関係と密かで繊細な愛情を育み、帥を失って詠んだ歌の和訳「…

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