『墓じまいラプソディ』/垣谷美雨 ◎

墓じまいラプソディ [ 垣谷美雨 ] - 楽天ブックス いやぁ・・・。垣谷美雨さんの作品ってだいたいにおいて、がっつりアラフィフ・バリキャリじゃない勤労主婦(非正規職)な私に、グサグサ来るんですよね~。本作『墓じまいラプソディ』も、〈見て見ぬ振りしたい「お墓問題」〉と〈選択的夫婦別姓〉について、「そうだ!そうだ!」と共感の声をあげたくなるようなエピソード、「あぁぁ~、胃が痛い、関わり合いになりたくない」と頭を抱えたくなるようなエピソード、満載・・・。そして、相変わらず〈出てくる男性陣が旧弊で見栄っ張り〉〈地方の因習がめんどくさすぎる〉をどんどん畳みかけてくるので、イライラもします(笑)。 私、自分のお墓は要らないって人間なのですが(松尾五月と同じくゴミとして捨ててOKなら捨ててもいいとすら思ってる)、それはそれで遺された人たちが遺骨(遺灰)の処分に困るようなので、〈合祀タイプの樹木葬〉を目論んでいます。だって、死んだら終わりだと思ってるし、残された人たちに墓の管理とかめんどくさいことを依頼するのも、嫌なんですよねぇ。なので、「墓じまいすりゃいいじゃん」って思っちゃう(笑)。 松尾家にしろ、中林家にしろ、自分が住んでいない地域での墓の管理なんて、大変すぎる。特に中林家なんて、墓の生花を絶やすと地域の人に後ろ指さされるとか、やってらんないわぁ。それを任される分家の嫁(60代)のイライラっぷり、すごい共感しました。自分たちが入れもしない墓や引き継げもしない古い家屋の管理を、「やって当たり前、ちょっ…

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『バイオスフィア不動産』/周藤蓮 ◎

バイオスフィア不動産 (ハヤカワ文庫JA) [ 周藤 蓮 ] - 楽天ブックス 白い立方体が重なり、砂ぼこりが舞っている風景をバックに、黒いセーラー服姿のロボット?がポーズをとる表紙。『バイオスフィア不動産』というタイトルだけでは、中身の想像がつきません。周藤蓮さんは、今まで読んだことはない作家さんですが、軽く楽しく読めました!ほぼすべての人類が、〈バイオスフィア建築〉に引きこもるこの世界は、ユートピアなのかディストピアなのか?  内部で資源的・エネルギー的に完結しているという、バイオスフィアⅢ(基本的には白い立方体)。中に入った人は、望む限りほぼ永久にその中で生活してゆけるという。ほぼすべての人類が、そのバイオスフィア建築に住み、ごく少数の〈外界主義者〉がコロニーを成して暮らしている。バイオスフィアを作り出し、供給管理しているのが、後香不動産。後香不動産のサービスコーディネーターのアレイ(閉所恐怖症のため、バイオスフィアⅢに入ることが出来ない)とそのデバイス役のサイボーグ・ユキオは、後香に入る様々なクレームに対処していく。 最初は、「全人類引きこもりとか、ディストピア小説なのかな~?」と思ってたのですが、どうも違う感じがします。仕組みはよくわからないけど、住人の希望は何でも叶う(ただし代替であることも)バイオスフィアの中に閉じこもり、人類が衰退していく・・・という流れではなさそう。とはいえ、直接的な交流がなければ、世代が続くことも難しいような気もするし・・・。 あと、アレイに対して「バイ…

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『Spring』/恩田陸 ◎

spring (単行本) [ 恩田 陸 ] - 楽天ブックス 恩田陸さんの描く、芸術の世界の物語って、本当にすごい。『蜜蜂と遠雷』のピアノコンクール、そして本書『Spring』のバレエ、どちらも真摯にその芸術に身を捧げた人たちの創り出す舞台を描くその物語が、芸術に素養のない私の胸にも響き渡った気がします。バレエという芸術を愛し、バレエにも愛され、努力でチャンスをつかみ取り、舞台を作り上げようという仲間に恵まれ、自分の中の〈踊り〉を極めに極めて昇華していった、主人公・萬春(よろずはる)。その名に、一万もの春を持っている彼の、『Spring』。 実を言えば、実際のバレエの舞台を見たことがありません。TVやYouTubeなどの画面越しに部分的に見たことがあるだけで、バレエの用語や歴史などは今までの読書経験でちょっと知ってる程度だったので、読み始めは「物語についていけるかなぁ・・・」と、少々不安でした。でも、春について語る、3人の彼への畏敬の念や温かい感情につられて、〈すごいのに愛おしい〉という思い入れがどんどん高まって、物語に惹き込まれました。バレエの技巧描写もすごいのですが、場面場面に関わる登場人物たちの感情の動きがとても豊かに描かれていて、ニュアンスを感じられた気がします。もちろん、バレエに詳しい方は、もっともっと楽しめるのでしょうけれど。 春のバレエ団のワークショップ参加時からの友人でバレエ学校同期になる深津、春の教養の土台を提供し春の最初のファンである叔父、幼馴染でヨーロッパで音楽活動をし…

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『文豪の死に様』/門賀美央子 〇

文豪の死に様【電子書籍】[ 門賀美央子 ] - 楽天Kobo電子書籍ストア 表紙のインパクトが、すごすぎる(笑)。小舟の舳先に座った芥川龍之介。裏表紙に向かうと、その小舟を操っているのはガリガリの河童。その背景には岡本かの子を描いた漫画。そして表紙に戻れば、白い文字で『文豪の死に様』。そりゃ、〈文豪〉たちがどんな死に様だったか、気にならずにはいられませんて。著者門賀美央子さんが選び抜いた、近代文学の〈文豪〉たちの死に様(つまりは生き様)、なかなか興味深かったです。 選ばれしは、樋口一葉・二葉亭四迷・森鴎外・有島武郎・芥川龍之介・梶井基次郎・小林多喜二・岡本かの子・林芙美子・永井荷風。それぞれ、どんな作品を物し、どのような生涯を経てきたかを描き、晩年や死因に関して言及。各人にサブタイトルでどういう死に様だったかを、一言で言い表しているのですが、簡潔にして極めて印象的、そしてツッコミ処がきちんとある。著者の略歴に大阪府生まれとありましたが、なるほどオチへの持って生き方が自然で解釈の仕方も人間味がありますなぁ。 それぞれの死に様一つ一つに私の感想を加えていっても、冗長になるだけですので、いくつかだけ。巻末の京極夏彦さんとの対談でも取り上げられていた「梶井基次郎の『檸檬』への違和感」、私も感じてました。教科書で読んだと思うのですが、「なんで本屋の棚差し荒らして檸檬置いてきたことが、こんなに「素晴らしいこと」みたいに取り上げられてるのさ」「確かに積み重なった画集の上に異色のレモンがぽつんと乗ってたら、…

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『シャーロック・ホームズの凱旋』/森見登美彦 ◎

シャーロック・ホームズの凱旋 (単行本) [ 森見登美彦 ] - 楽天ブックス いやはや、森見登美彦さんらしい作品でしたなぁ!!迷走する登場人物たち、パラレルワールドが入れ子細工、ハラハラする展開からの大団円、なんかもうホントに楽しかったです!ヴィクトリア朝京都でワトソンが『シャーロック・ホームズの凱旋』を描いたこの物語、非常に良かったです!! 京都がヴィクトリア朝でシャーロック・ホームズがスランプで、っていう始まり方からして「え、ちょっと待って、なになに、どゆこと??」なのに、何故か自然に京都の町に女王陛下や辻馬車やガス灯が溶け込んで描かれていくのが、すごいですよね(笑)。さすがモリミー。 ヴィクトリア朝京都のシャーロック・ホームズは、「赤毛連盟」事件の失敗で、以前から感じていた躓きが明確になり、スランプに陥ってしまう。それによって、ホームズの活躍を雑誌連載をしていたワトソンも、休載を余儀なくされる。全くスランプから脱出できないホームズの下宿(寺町通221B)に、同じくスランプのモリアーティ教授が越してきて、更に向かいには最近探偵として名声を挙げつつあるアイリーン・アドラーが事務所を構える。ホームズはアイリーンとの対決で気力を取り戻すかと思いきや、なすすべなく洛西ハールストン館の竹林に庵を結んで隠棲しようとしたり、モリアーティ教授の失踪にショックを受けたり、引き受けた事件をすべてアイリーンに丸投げして自分は下働きに徹した末に、引退を宣言。更に、再度ハールストン館の謎に取り組んだ末に、失踪。…

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『書楼弔堂 ~霜夜~』/京極夏彦 ◎

書楼弔堂 霜夜 [ 京極 夏彦 ] - 楽天ブックス 先の年末から、京極夏彦さんの作品を結構読んでいます。職場の休憩室で、〈なんかいつも分厚い本読んでるヘンな人〉が定着してきたワタクシでございますよ(笑)。で、今回は〈書楼弔堂 シリーズ〉の最終巻『書楼弔堂 ~霜夜~』にの世界にどっぷりと浸らせていただきました。確かに分厚かったですけどね、厚さは3.5cm・頁数は511頁、大したことなかった・・・?・・・うん、たぶん感覚が狂ってるな(笑)。 前作『書楼弔堂 ~待宵~』から5年の時を経て。新しき活字書体考案に取り組む青年・甲野が会社の代表・高遠に依頼され、弔堂を訪れようとして道に迷うところから、物語は始まる。坂の途中の茶屋の主人・鶴田は「自分は行ったことがないが行き着ける」と説明し、実際甲野は弔堂に辿り着く。夏目漱石や岡倉天心をはじめとするあの時代の著名人たちと出会い、彼らへの選本を横で聞き、下宿仲間の伯父の形見である錦絵を買い取ってもらったり、自分の郷里での仕事(版画の彫師)に思いを馳せたりしながら、日々を過ごしているのだが、彼には郷里に何かしらのわだかまりがあるようである。 甲野の会社の代表である高遠は、1作目『書楼弔堂 ~破暁~』の案内人・高遠ですねぇ。破暁のラストで姿を消した彼が、さりげなく「印刷造本改良會」なる会社の代表として、〈書物〉に関わる人物として登場。この『~霜夜~』がこのシリーズの最終巻であるという前情報は知っていたのですが、たぶん弔堂での経験に触発されて印刷造本の改良を目指…

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『きみのお金は誰のため ~ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」~』/田内学 △

きみのお金は誰のため ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」 [ 田内 学 ] - 楽天ブックス 時々「お金」についての書籍を読むことにしているのですが、本書『きみのお金は誰のため ~ボスが教えてくれた「お金の謎」と「社会のしくみ」~』も、その流れで〈読みたい本リスト〉入りしていたものです。著者・田内学さんは、元外資系証券マンで「お金」に関する書籍をたくさん記されている方です。本書、O市図書館ですごい順番待ちの末に、やっと私の手元に来ました。難しい経済や社会の話ではなく、中学生の主人公にもわかりやすいように「お金」について教えてくれるので、私のような中途半端な知識の人間でもわかる内容でした。 中学生の優斗は、ひょんなことから大きなお屋敷で「お金の謎」について教えられることになる。「お金自体には価値がない」「お金で解決できる問題はない」「みんなでお金を貯めても意味がない」大きなお屋敷で「お金の向こう研究所」のボス(関西弁でしゃべる、小動物のような初老の男性)のお金についての話を聞くうちに、世間一般で通っている「お金がなければ幸せではない」や「将来のためにお金は貯めるべき」などの欺瞞が暴かれる。何度も屋敷に通ううち、優斗はお金についての見識を新たにすることになるのだが・・・。 ボスの話、なんとなくわかるけど完全には納得できない私は、たぶんお金の奴隷なんですね(笑)。読了してもなお、「それでもお金は欲しい」と思ってますから・・・ダメじゃん。まあ、お金そのものではなく、その向こう側にある〈…

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『本日もいとおかし!枕草子』/小迎裕美子・清少納言 監修:赤間恵都子 ◎

新編 本日もいとをかし!! 枕草子 [ 小迎 裕美子 ] - 楽天ブックス 清少納言って、〈才気煥発・当意即妙〉自慢のいけ好かない才女・・・と思ってたのは、学生時代。今はもう、サバサバ系でパリピな気軽なお姉さん(ただし毒舌あり)だな~と親しみを感じています。そんな清少納言と彼女の作品『枕草子』を小迎裕美子さんの漫画で解説(監修は十文字学園女子大学教授の赤間恵都子先生)、楽しくて2日ほどで読んじゃいましたよ~。タイトルが『本日もいとおかし! 枕草子』で、表紙であかんべぇをする清少納言のドアップ、面白くないわけがありません(笑)。 小迎さんが『枕草子』から取り上げる、様々なトピックス。なんと1000年以上たった今でも、「マジそれな!激しく同意するわ~!」「やってらんないわ~!」「これ私も大好きッ!」と共感の嵐。 離婚した橘則光の「わかめ事件」には、笑っちゃいました。いや・・・エピソードそのものは知ってたんですけどね。小迎さんが描いた漫画で「わかめ送ったにもかかわらず、ニブすぎて全然わからない→和歌嫌いの則光に和歌を送って絶縁」という一連の流れをあの勢いで描かれたら、笑うしかないですよ。ナゴンさんの「そうだったーーこの人のーーこういうーー」のセリフの時の半分魂飛ばしてるかのような表情、そのあとの額に青筋立てて怒ってる様子、もうホント「わかるわ~、ですよね~、マジないわ~」って。 こんなに笑えて共感出来て、ちょっと毒舌に腰が引けつつも「私も‥そう思う・・かも・・うん、思うなぁ」なんて勇気を呼び起こ…

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『密やかな結晶』/小川洋子 〇

密やかな結晶 新装版 (講談社文庫) [ 小川 洋子 ] - 楽天ブックス 少しずつ物事が「消滅」していく島。住人たちはそれを受け入れ、消滅したものに対しての認識や感情も失い、日々を過ごしていく。小川洋子さんの描く、この島の人々が理不尽に失われていくものに対しても静かに受容していく諦観が、もの悲しかったですねぇ。タイトルの『密やかな結晶』とは、消滅した物に対する記憶ではなく、それぞれにある〈核〉のようなものなのかな・・・と読みながら感じていたのですが、文庫版解説の最後に解説者・鄭さんが小川さんご本人から「ほかの誰にも見せる必要のない、ひとかけらの結晶があって、それは誰にも奪えない。」という答えを聞いたというエピソードがあり、なるほどほぼ合ってるのかなと思いました。失われるもの、切り落とされていくものへの郷愁と諦観のバランスが素晴らしかったと思います。 突然消失するけれど、そのものはまだ存在していて、でもそれに対する思い入れは失われているので、それを捨て去ることに躊躇を感じない。私には、その状況が想像できませんでした。一生懸命、想像しようとするのですが、「目の前にあるのに、思い入れを一切失ってしまっている」という状態がわからない。物事に対する執着心は、そんなにない方だと思ってたのですが・・・。島の人々が長い年月をかけて少しずつ色々なものを失って、でもそれを受け入れていくしかない、あるもので生活を続けていくしかない、という閉塞感は、静かに静かに人々を蝕んでいったのでしょう。 消滅に対して記憶を失…

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『化物園』/恒川光太郎 〇

化物園 (単行本) [ 恒川 光太郎 ] - 楽天ブックス 〈それ〉は、殺し(捕食)を好む魔物であり、犬・猫・人間、なんにでも化けるし、非常に狡猾であると言われている。「ケシヨウ」という名称が一部では通っているものの、様々な形態で存在しているようである。本作『化物園』で語られるいくつもの物語のあちこちに、〈それ〉らしき存在が見え隠れしているけれど、登場人物たちを直接手にかけるようなことはしていない。恒川光太郎さんが描く、〈見たことがないのに、郷愁を覚える〉世界が繰り広げられていきます。 現代日本のような時代・昭和中期のような時代・江戸時代と思われる時代の日本らしき場所、中世の東南アジアらしき場所、どことも知れぬ隔離された場所、様々な世界が広がっています。「ケシヨウ」が人や動物を喰らうとされる物語もあれば、人を唆すだけの物語もあり、不具の子供を集めて尊ばせる物語、子供たちを外界から隔絶しひたすら音楽を追求させた物語も。 読んでいて、〈それ〉が恐ろしいというよりも、人間が〈それ〉をどうとらえるかで全く違った印象があるな…と思っていたら、最終章で〈それ〉は一つではなくそれぞれ違った存在であり、馴染んだ状況によって性質も嗜好も違う存在になっているということがわかります。自分たちの発生は、〈人の思念〉ではないかとそれは考えているけれど、定かではないことも。 ひそかに、そんな存在と共存してきた「人間」を描いたのが、この物語なのだと思います。ホラー・サスペンス・ファンタジー・・・、様々なジャンルを含んで…

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